僕はヘイズコードなんて信用していませんから、倫理的な意味で“18禁”にしろと言うのではありません。1969年の２月から８月にかけての半年間に、満18歳に達していなかった人間は、大人としてその時代を過ごしていなかったということで、この映画を体感できなかっただろう、という意味です。
今から50年前のハリウッドがどうだったか、僕は最近当時の映画を見直したり、“人類の月面着陸成功から50年目”という数々の番組を見て、記憶がリフレッシュされました。そんなときにタラちゃんが作ったこの映画が、まさに50年前ハリウッドで起こった凄惨な事件を扱っているかのような滑りだしなのは、当時18歳未満(もしくはこの世に存在しなかった)人間が見て、正しく時代をとらえられるのか？と不安になってしまいました。
僕はこの映画について何も情報を入れずに見に行きましたが、最近のＣＳ番組などのおかげで、リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)の家がある通りの名前が画面に映し出された瞬間から、結末にあの事件がくるのかと、暗い気分になりました。さらにご丁寧に、通りの奥に最近引っ越してきた人間を、リックと友人のスタントマン、クリフ・ブース(ブラッド・ピット)の会話で説明までします。
それどころではなく、とことん説明に終始する映画なのです。リックが50年代には売れっ子俳優だったけど最近はパッとしないだとか、だからテレビの人気シリーズに悪役で呼ばれているだとか、アル・パチーノ扮するプロデューサーが全部説明します。彼がエドワード・ルイスなのかどうかが問題なのではなく、これは「イングロリアス・バスターズ」でクリストフ・ヴァルツ扮する大佐が、“床下に隠れているユダヤ人に分からないように英語で話そう”と、うまく英語使用に乗り換えたと同じ手法なのです。
２時間41分の上映時間が長すぎるとか、途中の会話が退屈でダレる、なんていう人間は1969年に18歳未満だった人間に決まっています。なに？タラちゃん自身が当時６歳だって？ 偉そうにこの映画を“批判”してるあんたより、見事に1969年を生きているじゃないですか。そうそう、1969年当時すでに“精神的に死んでいた”大人たちは論外ですよ。僕が“仲間”だと思う人は、“生きていた”か“生きようともがいていた”人間に限定して語っています。←当時、ボーッと生きていただけの人でも、チコちゃんに叱られて目が覚める人は“仲間”です。
たとえば音楽です。“ミセス・ロビンソン”から“サークル・ゲーム”そして“アウト・オブ・タイム”の３曲が僕には痛烈でした。それぞれ歌手の名前を調べないと分からない人も、この映画の“仲間”ではありませんね。「マニックス」のマイク・コナーズの名前が出てこなくても結構、知ったかぶりで「アンクルから来た女」は69年に放送が終わっていたとウンチクをたれる若造よりはマシです。
そんなことより、100フィートを超す壁に描かれたテキサスの風景とジェームズ・ディーンの足に注目しなさい。そこでマーセデス・マッケンブリッジの雄姿を思い浮かべ、「エクソシスト」の悪魔の声を思い浮かべる人間だけが、この映画を評価することができるのです。ハリウッドに風車があるのも、チャイニーズとピラミッドを知っている人間にはうれしてにのです。
あ、構いませんよ、仲間じゃなくっても。発言は自由です。アメリカは自由の国ですから、大統領がツィッターで勝手気ままに発言してるでしょ。日本はその模倣でここまできましたから、アメリカこけたら皆こけたでおしまいでしょうけど、それまでまだ少し間があります。世の中うまくいかないのは先刻承知だから、目の前の小さな幸せにすがって生きればいいのです。
ということでこの映画は、2019年の阪神ファンにとっての原口選手の活躍であり、最近は守備がなっとらん高山選手だけど、あのサヨナラ満塁本塁打だけは録画して大事にしているよ、という映画なのです。その録画も、今年が終われば消してしまいますけどね。映画なんて、その程度のものなんです。されど、映画には“人生”をかけることもできる。
このタラちゃんの映画は、永遠の13歳である僕(そして1969年当時22歳だった僕)には、痛烈に響く映画でした。もし“仲間”になってくださるという奇特な方がいらっしゃったら、じっくりネタバレで話しましょう。個人的にはヒッピー姐ちゃんたちを、じっくり分析したいと思っとります。特に、車内にモノを忘れた娘(コ)がエエわぁ。←両親の名前を知ったら“ギョギョギョ”でした。
写真３を見て“誰や？”という人は、ずっとあっちへ行っててね。
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