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2019年09月02日09:16

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“面白うて、やがて…”どころではない、名コメディアンの実像。マリーナ・ゼノヴィッチ監督「ロビン・ウィリアムズ 笑顔の裏側」(2018)。

ロビン・ウィリアムズの記者会見に出席した体験談は、何度か日記にアップしました。そのとき通訳の戸田奈津子さんが、彼の語りを翻訳するのに追われますが、言葉が多すぎてついていけない。それを見たロビン・ウィリアムズが、“あんたも僕の横に来て身振り手振りで翻訳しなさい”と促すと、戸田さんはあきれかえって“それが出来るなら、あたし通訳なんかやってません”と返事していました。

つまり、記者会見とは言うものの、ロビン・ウィリアムズというスタンダップ・コメディアンのワンマン・ショーだったわけです。1時間ちょっとですが、圧倒的に楽しかったことを覚えています。

そのロビン・ウィリアムズは、2014年8月11日に亡くなりました。このドキュメンタリーでは当初の警察発表のとおり“自殺と推定される”としか述べませんが、友人たちが“パーキンソン病だった”と言い、奥さんが離婚したあたりの“うつ病”らしき雰囲気も伝わります。でもimdbによると“首吊り”だそうですから、明確に自殺でしょう。

長男のザック・ウィリアムズが語るところでは、ロビンはとにかく周囲の人を楽しませようとしていた、ということです。息子としてはもっと父親と過ごしたかったけど、声をかけられるとその人たちを楽しませようとしてしまうらしい。そして自宅では、子供たちに対してそこまでサービスはしないようでした。

スティーブ・マーティンが“最初はライバルとして警戒していた”と述べますが、「ゴドーを待ちながら」で共演したとき(写真2)、とことん役になりきってセリフをぶつけてくるロビンに驚いたらしい。それ以来、親友となったそうです。

またエリック・アイドルが長年の友人だったようで、親密だった関係を述べてくれます。エンド・クレジットで“Goodnight Robin”というアイドルの自作曲を披露していますが、これが泣かせる。

このドキュメンタリーでも引用されますが、僕は「レナードの朝」と「グッド・ウィル・ハンティング」のロビンが印象的でした。マット・デイモンに対して、“君が悪いんじゃない”と繰り返す心優しい先生の姿が、僕の個人映画史の中でも嚆矢というべきものです。そしてまた「いまを生きる」という映画について、このドキュメンタリーを見たことで日本題名の意味が大きくのしかかってきました。

この作品は、ロビン・ウィリアムズのマシンガン・トーク(という言葉では表現し切れませんが)とあの笑顔の裏側を、じっくり感じさせてくれたドキュメンタリーでした。マリーナ・ゼノヴィッチ監督(写真3中央)作では、ロマン・ポランスキーに関するドキュメンタリー「Roman Polanski: Odd Man Out」(2012)を見ていますが、イマイチ切込み不足だったポランスキーよりも、今回はずっと深く切り込んだ気がします。

ロビン・ウィリアムズは2003年の放送批評家協会賞の主演男優賞候補に選ばれた、その授賞式の映像が面白い。3人の候補のうちジャック・ニコルソンとダニエル・デイ・ルイスが同点で受賞し、ウィリアムズだけ落選します。そこでニコルソンがウィリアムズを壇上に呼び、“緊張で女優の尻ばかり気になっていたからスピーチできない。かわりにやってくれ”と言います。すかさずそこからワンマン・ショーが展開するわけで、ダニエル・デイ・ルイスは口を挟む暇がありませんでした。

ルイスが受賞者名を書いた紙を“3者同点だよ”とウィリアムズに渡すと、“ありがとうルイス、でも僕の名前だけ書いてない。仲間はずれにしてくれてありがとう”とも言ってました。それにしても惜しい俳優をなくしたものです。自分の役目に疲れきったのかも。その点僕は“ボーッと生きてる”から大丈夫か。
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