山登りに川下り。椎名誠のおおらかで明るいアウトドア·エッセイを読んでいると、焚き火が静かに(時に激しく)はぜる音や川面をなでる涼やかな風が感じられる。カヌーから手をのばして、シェラカップに四万十川の清流を汲んで作るウィスキーの水割りはまるで甘露のよう。
自分のように長い休みをなかなか取りにくい勤め人にとって、国内外の各地を旅する著者の本は、自由で豊かな時間、言わばもうひとつの人生を追体験させてくれる。決してストイックではない軽みのある山旅·川旅に身を委ね、活力を得て、再び日常へと戻ってゆくのである。
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