世界の哲学者に人生相談

NHK-Eテレの「世界の哲学者に人生相談」という番組の大にシーズンが昨日から始まった。
以前から思っているのだが、人生相談をもちかける相手を選ぶなら哲学者という選択肢はないのではなかろうか。哲学者は頭は良くても世知に長けているわけではないし、特に人格的に優れているわけでもない。人生相談にのってもらうなら、修行を積んだお坊さんの方が良いと思う。

昨夜の相談相手に選ばれたのはニーチェだ。ニーチェは第一シーズンでも相談相手に選ばれていたが、私見では、人生相談に不向きな哲学者の中でもとりわけ選んではいけないのがニーチェだと思う。怨念まみれの人間に相談持ち掛けてどうする？

「怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。」

なるほど、含蓄がありそうな言葉ではある。しかし、どのような格言にも表裏はある。人生の中ではからずも戦わずにはおれない局面もある、その場合には自ら怪物とならざるを得ない場合も無きにしも非ずである。
ニーチェの思想は一見雄々しくて潔いが、その実、選民気質の抜けないひ弱なインテリである。この格言も、仲たがいしたワーグナーを陰でボロクソに言っているのに、本人にたいして正面切って何も言えない自分を合理化するような「負け惜しみ」ともとれる。

ま、誰の言葉であれ、その言葉で救われる人がいるなら、そのことに対して文句を言ういわれもないわけだが‥‥。