mixiユーザー(id:64140848)

2019年03月02日10:29

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無理数は実在だろうか?

ウィトゲンシュタインには数学についての記述が実に多い。彼がフレーゲとラッセルの影響で数学基礎論から哲学に入ったといういきさつからすれば、それも当然のことかもしれない。しかし、彼は現代数学とは根本的なところですれ違ったまま思考を進めているので、カントール以来あまりに大きな成果を上げている現代数学の信奉者から見れば、「なにをいまさらこんな陳腐な事を言っているのだろう‥‥」ということになるのだろう。そんなわけで、数学の方からは彼のことはあんまりまともに評価されていないし、また哲学の側からも、彼には哲学の方でもっと生産的な仕事をしてもらいたいと望む向きもあったようである。

しかし、現代数学を理解するほどの能力を持たない私から見れば、ウィトゲンシュタインは至極まっとうなことを言っているように思える。

「哲学的考察」の181節に次のような文言がある。

【 無理数が完全であるということにどのような基準が存在するのか。無理数はいずれも有利的な近似値の系列に沿って走り、決してこの系列を離れない。私がπ(パイ)を除くすべての無理数の総体を持ち、そして今πを挿入するのであれば、そこのところでπが必要になるといった点を陳述することは不可能である。‥‥(省略)‥】

現実に私たちは、πの抜けた穴を特定するのは不可能だろう。理論上、抜けたπに近づけばπの近似値は限りなく(つまり無限に)存在するので、結局われわれはπの抜けた穴を特定することはできないのである。結局、ウィトゲンシュタインは無理数は数ではなく法則であると結論付けている。


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