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2019年02月08日06:14

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新実在論

マルクス・ガブリエルは言う、「モラルは存在する」と。なぜなら、「子供を拷問にかけて良いか?という問いに対し、『良い』と答える人はいないはずだ。」と言うのだ。なるほど、力強くて説得力のある言葉である。彼にしてみれば、日本人が問題にしている「人を殺すのはなぜいけないのか?」という問いはあまりにもナイーブ(素朴)すぎるのだろう。

日本人のほとんどは「人を殺すことはいけない」と思いながら、その客観的な根拠を問いたがっている。それはいわば、「1+1=2」であるのと同じように「人を殺すのはいけない」ということを納得したいというのと同じである。その底には、絶対的な規範があればそれに従っていさえすれば責任は回避できるという願いが潜んでいる。しかしカントは、人間の行為にはすべて責任を伴う、道徳行為はすべからく自律的であるべきと説く。カントのドイツ観念論の流れをくむ彼の感性から見れば、日本人の心性はいささか他律的であるように見えているらしい。

どうやら、私は新実在論の「実在」という言葉を誤解していたようだ。マルクス・ガブリエルは「モラルは存在する」と言いながら、同時に「絶対的(客観的)な真実は存在しない」とも言っているのである。「人を殺すことはいけない」というモラルは存在する。現にあなたはそう感じている、なのにその根拠をも同時に求めている。それはない物ねだりであるというのだ、哲学的に表現するとカテゴリーミスマッチだろうか。「実在」というのも、彼の表現によれば「有る意味の場」においては確かに存在しているという意味であって、「絶対的な意味において」というようなものはどこにもないのである。だから、あらゆるものがそこに存在する共通の基盤としての「世界」というのも存在しないというのである。
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