「ジャコメッティがねぶたを作ったとしたら」
という会田誠さんのツイート(2018.11)に思わず足を運びました。
oh!マツリ★ゴト
昭和・平成のヒーロー&ピーポー
@兵庫県立美術館
キッチュな展覧会タイトルからはちょっと想像できない硬派な展示でした。
【構成】
1.集団行為〜陶酔と閉塞
2.奇妙な姿〜制服と仮面
3.特別な場所〜聖地と生地
4.戦争〜悲劇と寓話
5.日常生活〜私と私たち
昭和から平成という時代を振り返るに当たり
特別な存在としてのヒーローと
人民・大衆・民衆という集団(people)が
美術のなかでどうとらえられてきたかという視点に立つ展覧会です。
【第1章】
展覧会は出征する兵士を送る人々の絵で始まります。
続いてデモをする人々、働く人々。
美術は社会を映す鏡であり社会的/政治的要素が盛り込まれることは当然です。
ただし展覧会のタイトルがあまり固いのも…というとこで
「oh!マツリ★ゴト」
という表現になってるのでしょうね。
このコーナーには
◆中西夏之
◆河原温
の作品があります。
特に中西、人間が描けなくなったために
T字型の連続として抽象的に描かれている群像が美しい。
おなじみの ◆柳幸典《バンザイ・コーナー》もあり。
【第2章】
この展覧会の特徴に、ジャンルを超えた作品が選ばれている
ということがあります。
たとえば紙芝居、アニメ、特撮。
大衆的なジャンルのメディアに登場した作品にまつわる
貴重な資料の数々が並んでいます。
なんだか美術館というよりは博物館のアプローチに近い。
美術という閉じた世界からとびだして、美術が日常生活の
延長にあることを改めて感じて欲しい、とは担当学芸員の
小林公さん。
そう、小林さんのレクチャーがあったのです。
それも90分という長尺で。
展覧会の見所解説がそんなに長いのは珍しくありませんか?
それだけ思い入れがあるのでしょう。
企画がたてられたのは5年前に遡るのだそうです。
現代美術作家の仕事をみせたい!と。
そこで選んだ4人のアーティストに 「日本全国からこれだけのものを400点借りる」
というドリームリストをお見せして、企画の主旨を説明。
それがどのような作品に結実したかは、のちほどネタバレます。
話をジャンル別にもどします。
企画段階で九段下の昭和館を見学、生活資料をみてイメージをつくったり。
マンガも
雑誌という自分のイメージに囚われず 政治風刺や、『大震災漫画』のようなジャーナリズムに近い役割を 果たしていたものもあることから展開しようと。
それをプロレタリア美術にもつなげて。
一方『のらくろ』のような架空の主人公の娯楽作品や 『ガロ』(96冊がずらりと展示されていて圧巻です)なども。
紙芝居はそもそも
(作者+作画家+演者+菓子屋)×プロデューサーと かかわる人が多く、
それが地域ネットワークで拡がるという
マスメディア的な役割のものでした。
今回は1930年代のオリジナル『黄金バット』が出ています。
(同じくヒーローの『月光仮面』『怪人20面相』では関連するグリコ森永事件の貴重な資料も。
昭和って本当に色々ありました)
特撮としては
◆海軍省『ハワイマレー沖開戦』1942
戦時の国策映画ですが円谷英二による特撮技術がのちのゴジラやウルトラマンに つながります。
さらにこの真珠湾のミニチュアセットは多くの画家がツアーで見学し 沢山のスケッチや作品を残しています。
【第3章】
切り口が「場所」へとかわります。都会、沖縄、福島。
◆松本俊介 の青い絵
◆木村伊兵衛の写真 国会議事堂
◆沖縄出身 金城哲夫(ウルトラQの関係者)の本土渡航用パスポート
◆Chim↑Pom の福島の烏映像 等々。
【第4章】
宮本三郎が描いた特攻隊員の肖像の横に
ご本人の写真と「誉の家」表札 が展示されているのには胸をつかれました。
『のらくろ』の表紙は単なる水玉模様だと思っていたら千人針の意匠だというし。
戦争がかかわるとヒーローという言葉はなんと恐ろしくなるのでしょうか。
◆藤田嗣治《12月8日の真珠湾》
◆北川民二《鉛の兵隊》
に描かれている飛行機は小さくておもちゃのようで。
陸軍による雑誌『機械化』の最終号はもはや白黒印刷、
裏表紙の「特攻隊へもう一機!」というプロパガンダも恐ろしい。
【第4章】
戦後、日常生活を取り戻した民衆を
赤瀬川源平は作品中で 「詰問者(Heckler)応援者(Rooter)同情者(Sympathizer) 烏合の衆(Crowd)下民(Rabble)浮浪人(Mob)暴徒者(Rioter)」と揶揄します。
しかし桂ゆき《夜》では
意志的な瞳でこちらを見つめる女性がかすかな希望を
感じさせて展覧会は終わります。
【4人の現代作家】
最後にこの展覧会の目玉 、4人の作家の新作について。
◆しりあがり寿さん
会場入口にウルトラマンなどのヒーローたちの衣装?が 洗濯物のようにつるされていました。 一方出口には新作アニメ《地蔵マンZ》
どちらも脱力系で超オモシロイ。
◆会田誠さん
超大作です。
兵士のようなものが触れているのは国○○○堂のような、お墓。
貼られた紙の色とか、指の構造とか、クオリティ高いです。
◆柳瀬安里さん
会田さんの作品をみてびっくりされたそう。
というのも、枯れたヒマワリがモチーフの組写真と動画でしたが
題材を選んだ動機が「枯れたヒマワリがジャコメッティに見えた」 からだというじゃありませんか。
写真にはご本人の他は紙人形しかでてこない、のかと
思ったら 「人形ではなく紙でできた人間です」とのこと。
◆石川竜一さん
SNS上で話題の石川作品。 沖縄の人々の写真はもちろん、
動画作品《MITSUGU》は 45分という長さでほとんど無音なのに、みせてくれました。
円谷版《ゴジラ》などは有料で、《ウルトラマン》などは無料で上映会もあるようです。
3月17日まで。
https://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1901/index.html
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