mixiユーザー(id:235184)

2019年01月09日07:18

108 view

○しい日本語

 「美しい日本語」や「難しい日本語」が存在しているのではなくて、「日本語を美しく使う人」や「日本語を小難しく使う人」がいるのではないでしょうか。少なくとも私は、「日本語」を実際に見たことはありませんが、「日本語を使う人」は実際に見たことがあります。

【ただいま読書中】『オール・イン ──実録・奨励会三段リーグ』天野貴元 著、 宝島社、2014年、1238円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/480021937X/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=480021937X&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=d86dc6bc69fae96ebf3ac4d1edb5a58f
 両親が共働きだった著者は、小学生時代に放課後を、家の近くにあった八王子将棋クラブ(「国民栄誉賞」の羽生さんもここの出身ですから、名門のクラブと言えます)で過ごすことになりました。200連敗のあとやっと勝てるようになり、著者は将棋の魅力の虜となり勉強などそっちのけで将棋に集中、15級でスタートしたのに小学1年で早くも初段、2年で四段になります。大人も含めて道場で「一番」となった著者ですが、全国大会で「渡辺君(10年後に史上最年少で竜王を獲る渡辺明)と出会ってその強さとオーラに感服し、あとから道場にやって来た「阿久津君(後の阿久津八段)」をライバルと見定めて毎日将棋対決をします(中学校までおそらく数千局)。1日に10〜15時間将棋の対局や勉強をしていた、というのですから、その集中力は尋常ではありません。著者は「あれだけ集中したら将棋が強くなるのは当たり前で、将棋以外にその集中力を向けていたら偉人になれたかもしれない」なんてことを言っています。
 著者は「自分には天狗になる悪い癖がある」と自己評価をしています。小学生名人戦では「強豪は全部優勝して奨励会に入ってしまったから、自分が優勝するに違いない」と思い込んでまさかの準優勝。奨励会に入ると最初に3連勝したため「自分は強い」と慢心してそこから成績が足踏み。トイレで、茫然と鏡を見つめていたり青ざめた顔で倒れそうだったりする三段リーグの面々を見ても「自分には無関係」と軽視しますが、のちに自分がその立場になってしまいます。『奨励会 ──将棋プロ棋士への細い道』(橋本長道)に、三段を突破できずプロになれなかった人の生活の特徴がいくつか書いてありましたが、著者にもその傾向があるようです。何しろ中学二年で、酒・タバコ・麻雀・競馬・パチスロを覚えているのですから。
 それでも16歳で三段リーグに入った著者は「すぐに抜けてプロになれる」と思い込んでいました。自分の実力に絶対の自信を持っているからこそ厳しい奨励会の世界を勝ち上がって来ることができたのですが、その自信は実は三段リーグの他の人間も持っていました。すると三段リーグを勝ち抜くには将棋の勉強と「自信」にさらになにか「+α」が必要となります。しかし著者は現役時代にはその「+α」の必要性がわからず、「鬼の住み処」と呼ばれる三段リーグでもがくことになりました。はじめは「将棋界でトップになる」が目標だったはずなのに「とにかくプロになる」が目標になっています。それはそれまでの自分の人生を否定するかのように著者には思えます。では奨励会を辞めるか? しかしそれはそれでそれまでの人生の全否定となります。しかし「不成績」と「年齢制限」は容赦なく著者に迫り、ついに退会の日が。
 中卒の26歳、就職経験なし、将棋だけは強い男、に、どんな仕事ができるでしょう? ところがそこに「舌癌」がやってきます。それもステージ4。おそらく悪くした原因は10年以上の大量の飲酒と大量の喫煙。成功確率50%の手術から生還し、放射線治療と抗癌剤の苦痛にも耐えましたが、それでも余命10年。著者はそこで「(秒読みがない)切れ負けの勝負」をする覚悟で生きようと決心します。著者は将棋では「終盤力」で名を馳せていました。人生でも同じく(まだ若いですが)終盤で勝負、なのです。



0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2019年01月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031