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2019年01月05日06:51

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成長=変化

 言葉は若者によって変化させられます。誤用や独自の工夫などによって若者言葉が成立し、その一部は「国語」にいつのまにか取り入れられてやがて「正しい言葉」へと“昇格"します。「大人」は習慣の奴隷になりがちですが、若者の心は柔軟だから、言葉の「新しい使い方」ができるのでしょう。
 言葉と同様、社会の価値観も若者が変化させ定着させることが可能です。もちろん社会の変化そのものは(革命のように)大人によってもたらされることもありますが、それを定着させるのは若者の「仕事」ということになるのでしょう。

【ただいま読書中】『エルヴィスが社会を動かした ──ロック・人種・公民権』マイケル・T・バートランド 著、 前田絢子 訳、 青土社、2002年、2800円(税別)
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 アメリカの歴史家にとって「音楽」「ポピュラー・カルチャー」は「まともに扱うには値しないクズ」でした。また「若者」も軽視されていました。本書はその「軽く見られていたもの」について、きちんと論じようとした本です。
 アメリカ南部は、人種・階級・ジェンダーががんじがらめに拘束された土地でした。黒人差別は「分離するが平等」という建前で正当化され白人(特に「大人」)はそれを当然の“常識"としていました。しかし1945年以降、黒人が集団で差別に抗議する、という行動が出現し、若者は「建前」とは違う「現実」がこの世に存在することに気づき始めます。
 権力は「若者の音楽嗜好」を警戒します。たとえ無害に見えてもそれが権力批判につながる恐れがあるから。それはかつてプラトンが『国家』で若者の音楽嗜好を批判したのと同じ態度でしょう。「新しい音楽を好む態度」は権力が管理しづらく「社会の変革」につながることがあるから「危険」なのです。
 エルヴィスは白人で南部出身だったから「黒人音楽を搾取しただけ」と非難されることがあります。しかし著者はそれを否定します。彼はたしかに白人ですが、白人の中でも抑圧される労働者階級の出身で、さらに「若者」でした。二重に「下」に見られていたわけです。しかし、子供のころから黒人差別にどっぷりとつかっているから心の根底にある価値観は差別を「是」としていたかもしれませんが、彼は黒人音楽を愛していたし、音楽の世界で「黒か白か」を問題にはしていませんでした。その結果「ロックンロール」は「公民権運動」と同時に盛り上がり、結果としてアメリカ社会を変革していきました。ただし「エルヴィスが意識的にアメリカを変えた」というよりは「様々なものが交叉する結節点に、たまたま才能のある若者が立っていた。そして彼の行動によって結節点で交叉する様々なものが変容していった」と言った方が正しそうです。もし本当に黒人蔑視をするなら、かつてのミンストレル・ショーのように顔を黒塗りして黒人を馬鹿にしながら音楽をしていたでしょう。しかしエルヴィスは「素顔」で真っ正面から黒人音楽に向き合っていました。その行動のあちこちに「黒人差別」の影だけを探そうとつつき回るのは、「若者」「白人」「ミュージシャン」というレッテルだけで彼を判断しているだけで、結局は差別が大好きな「大人」と同じことをやっているだけになってしまいそうです。


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