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2018年12月05日07:17

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地獄からの生還

 子供時代に血の池地獄とか火炎地獄の絵図を見せられて怯えた覚えが私にはあります。ただ、“地獄の目撃者"はどうやってこの世に生還してその記憶を絵にしたんでしょうねえ。

【ただいま読書中】『地獄の経典 ──『正法念処経』の地獄136全解説』山本健治 著、 サンガ、2018年、1800円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4865641114/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4865641114&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=c7ebe097ef9cd77b329ee78660ae2366
 「地獄」は仏の世界における刑法典である、と本書は始まります。刑法も裁判もきちんと行われない世界で、それに代わるものとして「地獄」が機能していた、というのが著者の理解です。
 なるほど、と私は呟きます。確かに法規制が機能しないのなら、「単なる無法状態」にならないようにするためには、人の内面を規制するしかないでしょう。
 しかし「地獄」は、たんなる「厳罰主義」ではありません。地獄を説く人が願うのは、人が死ぬ前に正道を歩むことです。だから、地獄について事細かに述べるお経は「正法念処経」であって「地獄念処経」ではないのです。大切なのは「正法」。このお経は5世紀頃成立しましたが、大きな地獄は8つ、そのそれぞれに16(ものによっては18)の別処(小地獄)が付属していることになっています。ただし地獄に落ちるのは、閻魔大王や獄卒の強制によってではありません。生前に自分が犯した悪行によってほぼ“自動的"に地獄への道を歩むことになるのです。
 しかしこれだけの数の地獄があるのですから、人間の悪行も事細かに分類されることになります。たとえば「大焦熱地獄」の「第十六小地獄」は「事故や病気で死にそうになったときに助けてくれた恩人の妻をたぶらかし淫行に及んだ者」専用の地獄です。そんなことをする奴がインドにはけっこういたのかな?
 一番恐ろしい地獄は「無間(阿鼻)地獄」ですが、ここに堕ちる者は「仏教に対する犯罪」や殺人(特に尊属殺人)などの大罪を犯した者です。寺に放火して火事場泥棒、もここにやって来ます。ここの第七小地獄「身洋処」は、火炎の海に焼き尽くされた亡者はすぐに復活させられてまた焼かれることを延々と続けられます。運良く海の上に浮上できたら、そこに住む鳥に全身をちびちび食われます。全部を食われたら排泄された糞から亡者は復活し、またちびちびと食われる……プロメテウスの刑罰よりもひどいですね。一度糞になってしまうとは……
 これだけバラエティーに富んだ「地獄」を見ていると、人間の想像力の豊かさには驚きます。ただそれだけ豊かな想像力には、結局実際に人間がやっている「悪いこと」という「根拠」があるわけで、そちらの具体例が豊富なことの方にも私は驚いてしまいます。


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