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2018年12月04日07:33

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キャッシュレス振興

 消費税アップを機会に、日本ではキャッシュレス社会を進めるのだそうです。だけど政府が言っているその理由が「よその国もやっているんだもん(経産省のサイトの説明を大胆に要約)」だというのはちょっと情けないな。
 しかし、キャッシュレスを振興するのは良いのですが、アベノミクスで何年も前からせっせと働いてお札を作っている輪転機の立場はどーなるんです?

【ただいま読書中】『中央銀行が終わる日 ──ビットコインと通貨の未来』岩村充 著、 新潮社、2016年、1400円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4106037823/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4106037823&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=e516da62684a83bc83c07ed2623e3634
 「悪貨は良貨を駆逐する」(グレシャム)という有名な言葉があります。これは、政府によって特定の通貨の使用を強制されている環境では、人々は良貨よりも悪貨を先に使おうとするので良貨は退蔵されてしまう、だから経済環境を改善するためには貨幣の品位を上げる必要がある、という意味です。しかし「強制」がない世界ではどうなるでしょう? 悪貨と良貨が「自由競争」をする世界では、人々は悪貨の受け取りを拒否します。つまりここでは「良貨は悪貨を駆逐する」のです。
 インフレでは貨幣の価値はどんどん減ります。消費者から見たらつまりこれは「悪貨」です。1971年の「ニクソン・ショック」で固定相場制から変動相場制に移行すると「特定の貨幣の使用の強制」が困難になり、貨幣同士の「競争」が始まりました。その結果「(インフレで価値が下がる)悪貨」は嫌われ、各国の物価上昇率はどんどん低下、90年代から世界規模での「デフレ」となっています。つまり「良貨は悪貨を駆逐する」が実現されてしまったのです。
 中央銀行の金融政策は基本的には「緩和」か「引き締め」の二種類しかありません。財政政策での増税はするけれど弱者には配慮する、なんて器用なメニューは金融政策では無理です。ただし「現在の緩和政策」は実は「未来の豊かさから借金をしている」ことなのだそうです(無理をした財政赤字などは、未来に返済しなければなりません)。さらに「インフレ政策」は「悪貨(インフレによって目減りすることが明らかな通貨)」を作り出します。そこで「悪貨から逃げたい人」は、まず「別の通貨(外貨)への乗り換え」を考えます。ところが各国の中央銀行は「協調」して「脱デフレ」政策を採っています。すると「逃げ道の選択肢」は「貨幣以外」になります。これまでは「貴金属」や「不動産」が選択されていました。しかし最近ニューフェイスが登場しました。それがビットコインなど中央銀行に管理されない「新しい貨幣」です。
 ビットコインは「全く新しい技術の産物」ではありません。「暗号」と「ハッシュ関数」という“枯れた技術(すでに人々によく知られた技術)"によってできたものです。この組み合わせによって、公開されたネットで匿名性を保ちつつ安全にビットコインのやり取りを行うことができる、ということで、技術的な背景が嬉しそうに書かれています。著者はこういった技術が大好きなようです。ただ、あまりに技術に関して詳細な話を展開したら素人はついて行けません。著者はだからほどほどのところで話を切り上げ「ビットコインの本当に面白いところ」について述べ始めます。
 ビットコインは「空中黄金」です。取り引きの正当性を保証するのはブロックチェーンで、そのブロックの正当性を保証する作業「マイニング」に成功した人は新しいビットコインを獲得できます。これはたしかに「面白いシステム」です。「利益を得ようとする利己的な行為」が結果としてシステムの健全性を保証するのですから。
 2013年にアイスランドで金融危機が起きましたが、同じ時期にキプロスにも金融危機が起きていました。キプロスの銀行から自分の預金を救おうとした外国(主にロシア)の顧客は、資金を運び出す手段としてビットコインに注目しました。それまでコンピューターオタクの遊び道具扱いだったビットコインが「世界」に打って出た瞬間でした。ただ、14年に中国政府がビットコイン取り引きを禁止し、日本でマウントゴックス社の不祥事があり、ビットコインの価格はずるずると低下。しかし取引件数は堅調に増加し続けていました。ビットコインの“成功"を見て、後継者が次々登場しました。これはかつての「和同開珎」や「富本銭」が中国の「開元通宝」のモノマネであったことのくり返しのような感じです。ビットコインには構造的な弱点が内包されていますが、それが使用上の限界に達したとき、新しい「コイン」が受け皿として機能するのかもしれません。そしてその内に「新しい貨幣」は「新しい通貨」になるのかもしれません。
 中央銀行が登場した原因は「経済成長」だそうです。ナポレオン戦争後の19世紀初頭、西欧は経済成長を始め、たとえばイングランド銀行は1844年にポンド紙幣の発行権を政府から付与されています。それをお手本に日本では日本銀行が設立されます。不思議なことに、政府から独立した中央銀行を持つ国の方が、政府に支配された金融政策の国よりも成功することが多かったので、文明国では中央銀行制度が広まりました。
 経済成長期には、中央銀行の金融政策はそれなりに機能していました。しかし、現在の世界は成長期とは言えません。さらに人々が中央銀行の金融政策を支持するかどうか、も重要な要素です。景気は中央銀行ではなくて「人々」が動かすものですから。また、「流動性の罠」(紙幣に額面が印刷されている以上、本当の意味でのマイナス金利での金融政策が実行できない)が中央銀行を縛ります。そこで「ビットコインたち」の活用を著者は考えます。ヴァーチャルの貨幣だったら額面を「マイナス」にできますから、金融政策の幅が広がります。ただそれをするのが「中央銀行」で良いのか、それとも市場の競争に任せるべきか、そのへんについてきちんとした議論が行われる必要があるでしょう。私としては「実物としての貨幣」と「ヴァーチャル貨幣」との間で「変動相場の市場」ができると経済は安定するのではないか、なんてことを思っていますが、この予想が当たるかどうかはやってみないとわからないでしょうね。


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