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2018年11月26日07:22

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数字をごまかすと

 民間企業(障害者雇用)やゴーンは罰せられます。国家公務員や政治家はおとがめなしです。

【ただいま読書中】『太平洋 その深層で起こっていること』蒲生俊敬 著、 講談社(ブルーバックスB-2063)、2018年、1000円(税別)
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 表層の海水は貿易風によって動きが生じ、黒潮などの潮流になります。北大西洋の海水は冷やされて密度が増し結氷したら塩分濃度が増してさらに密度が高くなって深部に沈み、深層海流を起こします。この海流は南下して南極周囲でやはり沈んできた海水が加わり、インド洋や太平洋を北上します。海水に含まれる炭素同位体などの研究で、北大西洋を出発した海水が北太平洋に到達するまで2000年かかることがわかったそうです。
 地球温暖化によって気温だけではなくて海水の平均温度も緩やかに上昇していますが、それに伴って北大西洋での沈み込みがゆっくりとなり、深層海流の速度も遅くなりつつあります。さらに二酸化炭素の溶けこみが増え、海水が酸性化しつつあります。もともと海水は弱アルカリ性ですが、この150年でpHが0.1下がったそうです。数字は大したことないように感じられますが、地球規模での変化ですから、重大に取った方が良いのではないかな。
 最近「マイクロプラスチックによる海洋汚染」が話題になっていますが、困ったことにこのマイクロプラスチックには海洋投棄されたPCBを吸着する性質があります。そしてそれを海洋生物が食べると、PCBの生物濃縮が起きます。そしてそれを私たちが食べることに…… つまりマイクロプラスチックは“他人ごと"ではないのです。
 東太平洋の海底には南北に「海嶺」が走っています。マントルからマグマが噴き出て新しい海底を作り、東西に少しずつ広がっていく、がプレートテクトニクスの基本的な考え方です。ハワイ島の真下にもホットスポット(マントルからのマグマの供給源)があります。ちなみにハワイ島のマウナケア山は海抜4200mですが、海底から海面までは5000mもあり、つまりは9000m以上の「高山」なのです。ハワイ島はプレートに乗って少しずつ日本に近づいていますが、「過去のホットスポット上の島」がその西側に点々と存在しています。低くなって海面下の「海山」として、ですが。ある程度西に並ぶとそこから先はなぜか「くの字」型に曲がって海山の列は北に向かっています。この部分が「天皇海山群(または海山列)」と呼ばれて、日本の古代の天皇の名前がそれぞれの海山につけられています。このあたりの海底地形を最初にきちんと調査したのは、1942年の貨物船「陽光丸」でした。当時最新の音響測探機で海底を地道に調査したのですが、非武装で日本海軍の制圧下の海域から出て東経170度あたりをうろうろさせられたのですから、無事で良かった、とつくづく思います。苦労して得た海底の地形データですが、海軍は「軍機である」と秘匿。その貴重なデータに光を当てたのが、戦後来日した海洋地質学者ロバート・ディーツでした。北西太平洋の地形を研究していたディーツは陽光丸の調査の噂を聞き、そのデータを見るためにフルブライト奨学金に応募、第1回派遣研究員に採択され1952年に来日しました。54年にディーツは海底地形に関する論文を発表、その中で「Emperor Seamounts」として9つの海山に古代の天皇(と神功皇后)の名前をつけました。なぜ天皇? ディーツ自身は95年に亡くなるまでこのことについては口を閉ざし続けていましたが、「日本に対する敬意や好意」と考える関係者は多いそうです。なお「神功皇后」にディーツは「Jingo」とルビをふっています。今の日本では「じんぐうこうごう」なのですが、ここから著者は古い『古事記』の英訳本や日本語の本をめくり、明治時代半ばまでは「じんぐう」と「じんごう」が混在していて、明治末期(20世紀初頭)ころから「じんぐう」に統一された、ということを調べ上げてしまいます。「寄り道」のエピソードですが、私にはとても面白い話でした。
 日本列島の東側で太平洋のプレートは沈み込みますが、その時大量の海水も道連れになります。この水分がカンラン石に付加されるとカンラン石の融点が下がってマグマとなり噴火しやすくなります。だから日本海溝の西側、つまり日本列島に火山がたくさんあるわけです。日本近海には明神礁などの海底火山がたくさんあり、それがいつ噴火するかはわかりません。実際に噴火に巻き込まれて犠牲となった人たちやギリギリのところで難を逃れた人たちの話があります(著者自身が、海底火山の噴火から8kmの地点(というか、海上の位置)にいたことがあるそうです)。
 超深海は「地球最後のフロンティア」と呼ばれることもありますが(宇宙飛行士はすでに550名以上いますが、1万m以上の深海に到達した人間はまだ3名だそうです)、まだまだ謎がたっぷり残されています。というか、超深海はまだ「探検の対象」であって「学術研究の対象」にはなっていません。行って生きて帰るだけで大変な世界なのです。だけどもうすぐそこも「学術研究の対象」になることでしょう。今のところ、海溝の中にも流れがあって5年くらいで海水が入れ替わっていることがわかっています。海水はよく混ぜられていて、海溝の底にもけっこう酸素や栄養分(ケイ酸塩など)が豊富にあって「死の世界」ではないのです。恐ろしいことに、1万メートル以上の深海に住む生物がPCBで汚染されていることもわかりました。それも、工業地帯からの廃液で汚染された沿岸堆積物に含まれるのよりもはるかな高濃度に。やはり「プラスチックごみ」については、早くできることをしておいた方が良さそうです。


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