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2018年11月04日07:10

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ありがちな形

 「紙に『月』と『星』を書け」と言われたら、「三日月の形」と「五芒星(☆)」を書く人が多いでしょう。たしかにそれで「何が言いたいか」はこちらにもわかりますが、実際に月や星は「そんな風」に見えてましたっけ? 旗など古典的なものや一般人が書くのだったらそれでもよいのですが、「新しいもの」を発信しているクリエイティブなはずの人たちの作品でそんな「お約束のシンボル」を見つけると、私は「もうちょっと創造性を発揮して欲しいな」なんて要求をしたくなります。プロは一般人をはるかに越える発想をしてナンボ、の世界ではありません?

【ただいま読書中】『肉の王国 ──沖縄で愉しむ肉グルメ』藤井誠二・仲村清司・普久原朝充 著、 双葉社、2017年、1600円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4575312703/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4575312703&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=fdb0a8634cb96b705def73b307be0971
 「沖縄では豚は鳴き声以外全部食べる。と、といわれている」と本書は始まります。そう言えば私が沖縄に初めて行ったとき、那覇の市場に豚の“部品"が豊富に並んでいただけではなくて、頭そのものもどんと置いてありました。あれはインパクトがありましたっけ。
 ただ「鳴き声以外全部食べる」は20世紀初めにアメリカの巨大食肉会社が「鳴き声以外全部製品にする」と自身のキャッチフレーズに用いていたものの再利用かな。
 著者の一人藤井さんは「本当に沖縄では豚はそこまで食べられているのか?」と疑問を持ち、友人と一緒に沖縄で“実地調査"を行うことにしました。つまりはディープな領域での食べ歩きですが。
 沖縄では「豚の内臓」は「ナカミ」と呼ばれて「ナカミ汁(吸い物)」や「ナカミイリチー(炒め物)」がありますが、まとめて「ナカミ」で茹ですぎで脂は徹底的に落とされているし、20種類あるという豚の内臓それぞれについての専門料理はそれほどポピュラーではありません。だから藤井さんは上記の疑問を持ったわけです。
 まず登場するのは「テッポウ」。豚の直腸ですが、これが美味いそうです。マルチョウ一本焼は、小腸が一本丸ごと裏返しにされて外側の脂が内側に入れられていて、それを焼くのですが、焼きすぎたら破裂するそうで、焼き手の責任が重大な「ホルモン」です。でも、面白そう。そして、美味しそう。
 沖縄のアグー種という豚は、成長に時間がかかり体は小さい、という特徴を持っています。資本主義の“敵"のような存在ですが、これが美味いそうです。また、「パイナップルポーク」は、沖縄特産パイナップルの絞りかすを飼料に育てた豚で、肉はさっぱりとしていてかすかにフルーティーだそうです。これを味わうには「トンテキ」が最善とか。
 「タンの一本焼」も登場します。たしかにタンの肉質によってはぺらぺらに薄いのよりやや厚切りの方が美味しいこともありますが、一本丸ごと焼くとは一体どんな歯ごたえと舌触りと味になるのでしょう? ただしこれは名人に焼いてもらわないと、ひどいことになりそうな予感もします。
 西洋には「ブラッド・ソーセージ」がありますが、沖縄には「血汁」があります。豚の血液を大量に投入した鍋ものです。顔をしかめた人がいるかもしれませんが、味は「口福」だそうです。
 沖縄でよく食べられるのは、豚だけではなくて、山羊もです。そういえば私が初めて山羊を食べたのも那覇でした。評判ほど臭くなかったけれど、私がにぶいのか、店の処理が上手だったのかな。
 本書の魅力の一つは「寄り道」です。話がすぐに盛大に寄り道をしてしまいます。肉や内臓にそれぞれ合わせる最適な飲み物の話、なぜ串焼きをバラしたりシェアしてはいけないか、トイレ問題、などなどなどなど。いやもう、肉グルメだけではなくて、人生を愉しんでいます。せっかく「命」を頂くのですから、せめて愉しんであげなきゃ、ね。


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