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2018年10月30日07:31

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水の表面

 水の沸点は1気圧で摂氏100度ですが、常温でも水面から盛んに空気中に水分子が飛び出しています。ところが水面には表面張力が働いていて、それはいわば「蓋」のように機能しているはず。蓋をしていながらそこを水分子が活発に通過できるとは、面白いですねえ。原子や分子を見ることができる視力があったら、水面を見ているだけで退屈をせずにすみそうです。

【ただいま読書中】『水の歴史』イアン・ミラー 著、 甲斐理恵子 訳、 原書房、2016年、2200円(税別)
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 昨日と同じタイトルの本ですが、こちらは「食の図書館」シリーズの本です。つまりこちらは「人が口にする水」の本です。
 人は水を必要とし、文明は大量の水を必要としました。だから古代文明は「水」のそばで発達するか、インカ帝国や古代ローマ帝国のように水を自らの近くに呼びよせました。しかし「水」を「安全な飲み物」にするための歴史は「苦難の歴史」でもありました。一見きれいに見える水にも様々なものが混じっていることは昔から知られていましたが、それを取り除くのは大変だったのです。
 「海水の脱塩」に最初に科学的に取り組んだのは、17世紀のフランシス・ベーコンで、土を入れた容器をいくつも重ねて海水を濾過させました。結果は失敗でしたが、これを基礎として水濾過技術は進歩し、その結果生まれた「サンドフィルター技術」によって公共水道が建設されるようになります。
 ほんの数世紀前のヨーロッパ(特にイギリス)には「水は健康に悪い(だからアルコール飲料を飲むべき)」と信じている人が多数いました。19世紀には逆の「大量の水は健康に良い(体内が浄化される)」という「水治療」も流行しますし温泉療法も流行しました。「水とアルコール飲料のどちらが人間に適しているか」の論争の中には「神が人に与えたのは水かワインか」というものまであります。
 水は「産地」「色」「味」「炭酸」などで分類されていましたが、レーウェンフックが発明した顕微鏡は新しい基準を水にもたらしました。「微生物の存在」です。すべての微生物が有害なわけではありませんが、そのなかには病気をもたらすものもいることがわかり、「きれいな水」の定義は革新されます。
 「水の保存(と運搬)」はまず船乗りに必要でした。「海水の淡水化」は1770年にチャールズ・アーヴィングが最初の実用的な技術を開発します。同じく18世紀には「ミネラルウォーターの瓶詰め」が発売されます。19世紀には廉価なガラス瓶が開発されて人気がさらに高まります。20世紀には核戦争に備えて水の缶詰も発売されました(割れにくいですから)。
 「単なる水」に魅力的な付加価値をつける試みの最初は、人工的な炭酸水です。「ペリエ」など天然のボトル詰め炭酸水が人気だったので、それにあやかって製造されました。ただし輸送途中での事故が多く、それに対する対策が、日本ではラムネの瓶に使われるコッドネック・ボトルです。
 プラスチックボトルが商品化されたのは1940年代で、製造原価が下がって大量生産が可能になったのは1960年代。家庭で炭酸水が製造できるソーダサイフォンが発明されたのは1813年、ただしこれは二酸化炭素がなくなると詰め直す必要がありました。硫酸と炭酸カルシウムを混ぜて内部で二酸化炭素を発生させるソーダファウンテンの開発は1832年。これは数十年後には世界の主要都市のドラッグストアや小売店に広まります。
 マーク・トウェインは「ソーダ水を38本飲んだら、翌朝腹がパンパンになって服が着られなかった」という「不満」を訴えています。
 バイロンのように「炭酸水は味気ない」と不満を言う人も多くいて、その対策として「フレーバー」も用いられました。1827年の「炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムとクエン酸を混ぜた水」は初期のレモネードと言えるでしょう。もともと「フレーバー付きの水」は医療用に広く用いられていて(さまざまな薬草や果汁を入れていました)、たとえば「トニックウォーター」はキニーネが入っていて抗マラリア効果が期待されていました。「スカッシュ」はルネサンス期のイタリアで作られましたが、そのベースはアルコールでした。炭酸水をベースにしたスカッシュ(の原形)は1867年に登場します。
 「氷を入れる」も水の魅力を増す一つの方法です。これは氷が手軽に入手できるようになるまでは、氷室を使ったり北方から南方にはるばる輸送したり、の苦労がありました。19世紀に上流階級を相手の氷産業が栄えますが(氷は高価な贅沢品でした)、20世紀に一般家庭で氷が作れるようになると氷産業は崩壊します。そういえば我が家でも、電気冷蔵庫がやって来るまでは氷屋さんから氷を買っていましたっけ。
 世界に淡水は不足しています。そのことに関して、著者は「飲み水は天然資源と考えられがちだが、実際は人間がつくる製品と考えたほうがよい」と言います。つまり「水」がそこにあったとしても、そのままでは「安全な飲み水」とは言えないのです。とりあえず私にできるのは、節水でしょうか。



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