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2018年10月03日07:27

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男女差

 文化はそれぞれ違いますが、男女で名前や着るものが男女で区別される、という一般論は大体共通しています。ただ、異文化の服を突然見せられたらどれが男物でどれが女物かはわかりにくいものです。ところで、異文化であっても名前のたとえば「デニス」は男だが「デニース」は女に聞こえるのはなぜなんでしょう。ユングの「元型」みたいなものがここにもあるのかな?

【ただいま読書中】『ドレスを着た男子』デイヴィッド・ウォリアムズ 著、 クェンティン・ブレイク 画、鹿田昌美 訳、 福音館書店、2012年、1500円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4834026825/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4834026825&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=ef12cc074301e7e1694bc76e0449cf17
 デニスはサッカー好きの12歳の少年。母さんが家を出て行ってからは、すごく太っちょの父さんと2歳上の兄さんと一緒に暮らしています。母さんのことを忘れられないデニスは、雑誌「ヴォーグ」の表紙に、母さんが好んでよく着ていたのとよく似たドレス(を着たモデル)が載っているのに目と心を奪われます。勇気を振り絞って買った「ヴォーグ」は「こんなの女が読むものだ」と父さんに捨てられてしまいましたが、そのかわりのように、学校で一番の美少女でファッションセンスが良い(だから制服を着崩して教師に目をつけられている)リサと知り合うことができました。リサの部屋でファッションについて夢中でお喋りをしていて、デニスはリサが作っている最中のドレスを見たときに「新しい世界」が目の前に広がったのを感じます。
 デニスの親友はシク教徒のダルヴィッシュ。彼は学校で唯一「パトゥカ(男性のシク教徒が必ずかぶる帽子)」をかぶっています。デニスがそれを借りてかぶってみたら、それはただのファッションです。では、ドレスは?
 リサはデニスにドレスを着せたいと思っています。デニスはドレスを着たいと思っています。そこで「ドレスを着た男の子」が登場します。リサはさらに押します。お化粧、ウィッグ、ハイヒール、ハンドバッグ……さあ、これで「女の子として世間に通用するかどうか、の大冒険」が始まります。
 私は笑い転げそうになります。最初は近所の店で、そしてこんどは学校で。授業やクラスメイトとのやり取りも抱腹絶倒ものですが、デニスにとって「異世界」の「女子トイレ」は……やはり「異世界」でした。
 しかし、冒険は校庭で唐突に終わります。異常に厳格な校長は激怒。デニスは退学を命じられます。激怒した父さんはデニスを自宅軟禁状態に。
 しかし「制服を着ずに登校した」は退学の理由になります?
 納得しない人たちは、とんでもない手段に出ます。いやもう、笑いと混乱の決勝戦です(意味がわからない人は本書を読んでください)。
 けっこうシビアなテーマを扱っていますが、心が温かくなる青春小説でもあり家族の再生の物語でもあります。文体は軽妙できびきびとして無駄が省かれ、とてもテンポ良く読めます。あたかも細かいパスをワンタッチですぱっすぱっと的確につないでいくサッカーの試合を観戦しているような気分にもなれる、何重にもお得な物語です。続編も書いて欲しいなあ。


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