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2018年08月22日06:43

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百均古今東西

 1ドルがまだ360円だった時代に「実際にアメリカで暮らしたら、1ドルは日本の100円くらいの値打ちだった」と聞いたことがあります。現在の日本では「百均」ですが、アメリカのワンコインショップは「1ドル(か99セント)」で、やはり1ドル=100円の感覚で良いようです。
 そういえば江戸時代には「四文屋」という「ワンコイン」ではありませんが「なんでも四文」という今の百均にあたる店があったそうです。するとその頃のアメリカの「百均」ではどんな値付けをしていたんでしょうねえ。1セントとか10セントかな?

【ただいま読書中】『殿様と鼠小僧 ──老公・松浦静山の世界』氏家幹人 著、 中央公論新社(中公新書1004)、1991年、621円(税別)
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 泰平の江戸時代、江戸の大名屋敷の武家奉公人の多くは、大名の領国の家来から江戸での臨時採用に切り替わっていました。家来は一生奉公ですし江戸の往復の旅費もかかるから“コスト"がかかります。しかし江戸で1年とか半年の臨時採用をしたら、コストは抑えられます。しかし奉公人たちは奉公人で“組織"を作って好き放題をするようになりました。だって「コスト」でつながれた仲であって殿様への「忠誠心」などどこにもないのですから(金で忠誠心は買えません)。そのため、仲間内での競走に熱中して殿様の駕籠をひっくり返すような陸尺(駕籠かき)に対しても強いことが言えない殿様がごろごろと(腕の良いのに他家に移られたら困りますから)。
 本書は、平戸藩主松浦清が隠居して静山と号して著した『甲子夜話』をネタとして、江戸時代後期について実に面白く描写されている本です。
 まずは「隠居年齢」。静山は47歳で隠居しましたが、これは当時としては別に珍しい年齢ではありませんでした。ということで幕臣や大名の平均隠居年齢のグラフが本書に登場します。ただ、当時の平均寿命が50歳くらいと短いとしてもそれは乳幼児の死亡率があまりに高いことが原因で、50まで生きた人の平均余命はそれなりにあったはず(でないと1歳や3歳で死んだ人が下げた「平均寿命」を50まで持ってくることができません)。長い長い「老後」の時間をどのように暮らしていたのでしょうねえ、というか、静山は『甲子夜話』を書くことで時間を使っていたわけですが。他の大名旗本なども実に多彩な著述や作品制作をおこなっていますが、それについては『諸大名の学術と文芸の研究』を読むと良いそうです)。
 そして話は「鼠小僧次郎吉」に。大名や金持ちを懲らしめ、貧乏人に金をばらまいた、という「義賊伝説」がもてはやされました。実際にはそんな「義賊」ではなかったようですし、学者は「泥棒を礼賛するとは」と「義賊伝説を好む人」を非難していますが、庶民が鼠小僧に喝采したのは「泥棒行為を礼賛した」のではなくて「圧政や腐敗した官僚組織への怒りの表明」だった、と言えるでしょう。ただ、表だって怒りを表明するとそれこそ「圧政や腐敗した官僚組織」に罰せられてしまいますから「鼠小僧を喝采」してみせたわけ。だったら幕府がそこでするべきは「鼠小僧の禁止」だったのかな?
 寛政年間の葵小僧は、殺人を平気で繰り返していました。しかし天保三年に召し捕られた鼠小僧は流血を避けていました。これは「個人の主義」かもしれませんが「流血を嫌う世相」の反映かもしれません。江戸時代前期はまだ「戦国時代の名残」が色濃く残っていましたが、中期からは少しずつ「泰平」にと移行していたことは、他の文献からも読み取れるので、「人々の気持ち(何を受け入れ何を否定するか)」も変化していったはずです。すると盗人の側も「世間の風潮と照らし合わせて、「恥ずかしいことはしたくない」と意識するようになります(「盗むこと」自体の是非はおいて、ですが)。
 「小僧」はもともとは「小さな身体の少年」「巾着切り(掏摸)」のことだったようです。そこから著者は「殿様」と「小僧」の不思議な関係を考察し、とうとう『小僧の神様』『鞍馬天狗』などに「殿様と小僧」の“残像"を読み取り、さらに「コンピューター社会とウイルス仕掛け人」にまで話を到達させてしまいます。まるで「江戸時代」と「平成の日本」が“地続き"のようです。いや、本当に“地続き"なのかもしれません。


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