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2018年08月16日07:30

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再発防止

 1989年に起きたロマ・プリーター地震でサンフランシスコに向かう二階建ての高速道路の二階部分が下に落っこちたとき、日本の専門家は「日本では大丈夫」と断言しました。1995年の阪神淡路大震災で阪神高速道路が転倒するまでは。
 チェルノブイリやスリーマイル島で原発事故が起きても、日本の専門家は「日本では大丈夫」と断言しました。フクシマが起きるまでは。おっと、今でも「専門家」は「これからは大丈夫」と断言していますね。
 一昨日イタリアで巨大な橋が崩落しました。専門家が何を言っているか、私は知りませんが、「日本では大丈夫」なのかどうか、日本でも同様のことが起きる前にきちんと点検した方が良いのではないです? そういった視点からの点検が不要だというのだったら、その論拠は?

【ただいま読書中】『鉄道と自然災害 ──列車を護る防災・減災対策』公益財団法人鉄道総合技術研究所 防災技術研究部・鉄道地震工学研究センター 編、日刊工業新聞社、2015年、2800円(税別)
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 平成30年7月の西日本豪雨で、鉄道も大きな被害を受けました。ただ、鉄道が豪雨で大きな被害を受けたのは初めてではありませんでした(それを言ったら、鉄道“以外"が豪雨で大被害を受けたのも初めてでも久しぶりでもないのですが)。
 2012年九州北部豪雨。福岡、熊本、大分で死者30名、行方不明2名、18府県で住宅全壊363棟、半壊1500などの被害が生じました。鉄道では15の路線で被害が生じましたが、豊肥線では、トンネル崩落や盛土崩壊が生じ、復旧まで1年もかかりました。トンネルの中をあまりに大量の水が流れたため、トンネル内の線路が根こそぎされトンネルの一方の口からまとめて吐き出されてぐるぐるとぐろを巻いている、というショッキングな現場写真が本書にあります。
 2013年の山口・島根豪雨では、バックビルディング現象による豪雨で山口線と山陰線に多数の土砂被害が生じました。こちらもトンネル、切り土、橋梁などに多数の被害が生じています。そしてこちらの復旧にも1年かかっています。
 「豪雨による盛り土崩壊」だけに限定しても、20世紀から多数の被害が鉄道に生じていたことが本書で紹介されます。崩れたら復旧工事をして、前よりは丈夫に作り直す、のくり返しをしていて、強く作ったところはそれ以後崩れることはないようですが、そういった補強工事をしていないところが“次"に崩れる、のくり返しに私には見えます。それだったら最初からきちんと造っておけば良いのに、「過剰品質」は嫌われている、ということなのでしょうか。だけど「時間とコスト」を節約して建設をしても、結局復旧にそれ以上の時間とコストがかかるのだったら、結局「損」それも「大損」をしていません? 復旧工事に伴って、崩壊メカニズムの研究とか水の流れの知見とか、学術的には面白いことは多いようですが。
 そういった“ハード面"の対策だけではなくて“ソフト面"の対策も重要です。1993年鹿児島県の豪雨では、危ない、と列車が駅に避難していたら、その駅が土石流に襲われた、なんて事例もありました。避難や退避は「すればよい」のではなくて「起き得る被害がどこまで考え抜かれ、想定がされているか」が重要です。
 雪による被害も複雑です。まず思うのが雪崩ですが、吹きだまりができて列車が脱線したり、冠雪したための倒木が線路を塞いだり、雪はいろんなことをやってくれます。
 ほかにも地震、火山噴火、風化などさまざまな「自然災害」が鉄道を襲います。そのすべてから完全に守られることを望むのは望みすぎでしょう。ただ、被害を少しでも少なく、復旧は少しでも早く、を望むことは現実的。だって鉄道は「インフラ」であり、鉄道と同様の(あるいはそれ以上の)被害を受けた地域の復興のためにはインフラが復旧することが重要なのですから。「被害が生じる」を「当然の前提」とするのは、そんなに難しい態度です?


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