先の大戦後、軍国主義に凝り固まっていたはずの人たちが即座に「民主主義万歳」に豹変したことを私は不思議に思っていましたが、21世紀にも似た現象があったことを今思い出しました。民主党による「政権交代」のときのことです。「自民党→民主党」に大規模な手のひら返しがあっただけではなくて、３年後にはご丁寧に「民主党→自民党」の“往復"もありましたね。
集団としての日本人は、記憶力か判断力か信念を信じ続ける力か、何かが弱いのでしょうか？
【ただいま読書中】『暴走する正義 ──巨匠たちの想像力「管理社会」』筑摩書房（ちくま文庫）、2016年、1000円（税別）
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目次：「公共伏魔殿」筒井康隆、「処刑」星新一、「戦争はなかった」小松左京、「こどもの国」水木しげる、「闖入者」安部公房、「カンタン刑」式貴士、「錯覚屋繁盛記」半村良、「革命狂詩曲」山野浩一、「市二二二〇年」光�麥�
「巨匠たちの想像力」というアンソロジーは全三冊です。少し前に「あしたは戦争」を読んで強い印象を受けたものですから、全冊読むことにしました。目次を見ただけでわくわくします。未読の作品もある程度想像はできる気はしますが、おそらく“巨匠たち"は、こちらの生半可な予想など全力で裏切ってくれるだろう、なんて期待もしてしまいます。
筒井康隆はやはり“筒井康隆"ですが、ドタバタ場面で手加減をしているフシがあります。こういった題材の場合あまり露骨にやったらかえって面白くない、ということかな。星新一はやはり“星新一"です。こわいくらい冷静な手つきで「この世界」を切り分けてくれます。そして小松左京は……初めて読んだときには一種の怪談だと思いましたが、現在は「予言」（「戦争はなかった」が「現実」になりつつある）だと感じました。日本の為政者はなぜか「戦争によって日本がひどい被害を受けたこと」を否認しようとしているように見えますから。
本書のどの作品を読んでも「なんだかネットで似た動きを見たような気がする」と私は呟いてしまいました。もしかしたら「巨匠たち」は「人間性の本質」を抽出してそれぞれの作品に仕込んであるのかもしれません。
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