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2018年08月08日07:01

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勇気

 “それ"に取り組むのに、勇気を必要としないのは、真の仕事とは言えないでしょう。
 “それ"に取り組むのに、勇気を必要としないのは、真の愛情とも言えないでしょう。

【ただいま読書中】『ミケランジェロの生涯 ──苦悩と歓喜』アーヴィング・ストーン 著、 新庄哲夫 訳、 二見書房、1975年、1000円
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 1964年はミケランジェロ死後400年でしたが、豊富な史実を骨格としその空白部を小説技法で埋めた本書が出版されたのは1960年でした。
 ゆるやかに衰退しているかつての名家ブオナロッティ家のミケランジェロは、父の望みに反して芸術家を志します。さらに、弟子入りをしたアトリエの師匠ギルランダイオの「フレスコ画を目指すべき」という指導にも反して、彫刻を志しています(さすがにアトリエでは絵を描くことに集中していますが)。なんとも“反抗的"な13歳ですが、その芯の強さと主張の正しさは、天才的です。そしてその意欲が認められたのか、メディチ家の彫刻学校への入学を許されます。父親は、息子が芸術家どころか肉体労働者になってしまうことを悲しみますが。厳しい下働き生活のあとやっと「彫刻」が許されますが、ミケランジェロが渇望する大理石の代わりに彼に与えられたのはロウと粘土。まだまだ「修業」が続きます。しかしついに宮殿に招き入れられ、ミケランジェロがまず目を奪われたのは、60年前に鋳造された青銅製のダヴィデ像でした。
 ちなみに、私は「この地球で最高の彫刻はミケランジェロのダヴィデ像だ」と思っています。
 「自分が落ちつくべき場所」をついに見つけた15歳のミケランジェロの前に「彫刻家への道」がやっと見えます。そして、彼には見えませんが、「才能」を見つけそれを後援することに喜びを感じる人々のサポートとケアがその道を“舗装"しています。それでもミケランジェロは、自分の「足」でその道を歩み、自分の「手」で大理石を彫らなければならないのです。
 フィレンツェで絶大な権力を誇るように見えるメディチ家ですが、実は権力のバランスの上にきわどく立っている上に、教会との仲が良好とは言えませんでした。メディチ家当主ロレンツォの死によって、ミケランジェロはパトロンを失うことになります。
 不遇に耐え、ミケランジェロは「人体解剖」に取り組みます。ばれたら死刑ですが、ひそかな協力者がいました。しかし、そこまでして“リアル"な彫刻を製作したいのですね。
 かなわぬ初恋(両思いなのですが)、男同士の愛情(ミケランジェロはそのことには疎いようです)、宗教心、嫉妬による妨害などがミケランジェロの人生を彩ります。フィレンツェにフランス兵が侵入、追放されたメディチ家当主ピエロは反攻を画策します。
 ミケランジェロの名声は少しずつ高まり、「職人」と「マエストロ」の間に位置できるようになります。そしてついに「ダヴィデ」の製作開始。それと同時に、レオナルド・ダ・ヴィンチとの確執も開始されます。
 私個人にとって「ミケランジェロの物語」はこのダヴィデ像でおしまい、で十分です。もちろんその後も彼の「物語」は続くのですが。
 それにしても「芸術家の足を引っ張ることにだけは長けている人」がどっさり登場するのですが、世の中って「そんなもの」なのでしょうか。それを「芸術」で表現したら、いったいどんな作品になるのでしょうねえ。


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