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2018年07月24日07:00

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あぶる

 最近の回転鮨のメニューに「あぶり」がずいぶん増えた印象があります。サーモンもハマチも蛸も炙って炙って炙りまくっているような感じ。
 ところでかつて私は火鉢で手を炙った覚えがあるのですが、あれも本当は手を炙って食べるためだったのかな?

【ただいま読書中】『料理の四面体』玉村豊男 著、 文藝春秋(文春文庫)、1983年、300円
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4167322013/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4167322013&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=388474cfd9fdb7a202a827d8e05ca22f
 アルジェリアを徒歩でさ迷っているときに、路傍でご馳走になった「アルジェリア式羊肉シチュー」はとてつもなく美味しいものだったそうですが、それと基本の材料や技法が共通のものとして著者はフランス料理の「コトゥレット・ド・ムトン・ポンパドゥール」を連想します。“枝葉"は違うけれど“幹"は全く同じだ、と。そしてさらにその“幹"が同じものとして「ブフ・プルギニョン」、さらには「豚肉の生姜焼き」を連想していきます。見かけは全然違う料理でも「一般原理」というものをつかめたら、その共通点が見えてくるし、さらにその原理を別の材料に応用することでレパートリーはあっという間に1000や2000は増やすことができる、と(実際にその“増やし方"を「ソース」を例として示してくれます)。
 「直火による調理」では、火からの距離によって「グリル」「ロースト」「燻製」と呼び分けられますが、それが行くところまで行くと「ただの風干し(干物や生ハム)」もこの“ライン"に加わることになります。で「干物は加熱されてないぞ」という反論には著者は「上を見ろ。1億5000万キロ向こうから“加熱"されている」と言っています。
 次は「揚げ物」。素揚げ、から揚げ、てんぷら……そうそう、東欧は「揚げ物の宝庫」で、特にルーマニアのとんてん(豚のてんぷら)が絶品だったそうです。揚げ物と言えばカツとフライも忘れてはいけませんが、「日本語」では「肉」は「カツ」、「魚」は「フライ」と呼び分けていますが調理技法は同じです。ここで突然「目玉焼き」が登場するので私は面食らいますが、「目玉焼き」は英語では「フライドエッグ」。何を「フライ」にしてます? 英語では「油を使っての調理」は「炒める」も「揚げる」も「フライ」になるのですが、おれは油が貴重品でたっぷり使えなかった時代に「フライ」という言葉が成立したためだそうです。ちなみにフランス語では「炒める」は「ソテー」、「揚げる」は「フリール」と区別していますが、中華料理の油脂調理が基本技法だけで「炸(ザ)」「炒(チャオ)」「爆(バオ)」「煎(ヂエヌ)」「貼(ティエ)」「烙(ラク)」……中華鍋のどこまでどんな油を入れてどんな料理技法を用いるかがこれらの漢字一文字できちんと表現されているそうです。
 そして「生」。西洋料理では「火を使わないもの=料理に非ず」とされているそうですが、日本では「割烹(割=切る、烹=加熱する)」という言葉が生きているし、料理人のことを「庖丁人」とも言うことからも、「切る技術」が「火の技術」と同等あるいはそれ以上に重要だと認識されているようです。刺身、サラダ(ドレッシング)、タコ酢、と考察が進んで著者は「刺身はサラダだ」と主張し始めます。いや、笑っちゃいますが、たしかに「マグロの刺身の盛り合わせ」にはサラダとしての構成要素(マグロ、大根、ミョウガ、シソ、ドレッシング(醤油)、スパイス(ワサビ))が基本的なものはちゃんと入ってますね。さらには「サラダは漬け物だ」とも。ただし漬かる前に食べちゃいますが。著者の発想や連想力はみごとです。
 最後は「煮る(茹でる)」。スープ、お粥、ブイヤベース、シチュー、鍋もの……そして蒸し物も著者は「煮る(茹でる)」の中に入れてしまいます。「水」で加熱するのと「水蒸気」で加熱するのと、どこが本質的に違う?と。この割り切りの良さが快感です。
 そして著者は「料理の基本4要素」として「火」「空気」「水」「油」を挙げます。この4つを頂点とする正四面体のどこかに「すべての料理」が位置する、のだそうです(底辺が「空気」「水」「油」の三角形でそこが「生の世界」、そしてそこから出発して上の「火」に近づくにつれて料理法が変化しその結果違う料理が生まれる)。その図は、とっても素敵です。プラトンの「『火』の元素は正四面体」に以前私はヤられましたが、玉村さんの「料理の四面体」にもヤられてしまいました。この「料理の四面体」にたとえば「豆腐」を放り込んだら、あっという間に20の豆腐料理が登場します。その数は工夫次第でさらにいくらでも増やすことができるでしょう。さらにそこでできたものをまた底辺の「生もの」に放り込んでやったらまた別の料理が生まれます。たとえば豆腐百珍はこの作業の結果なんだ。
 いやあ、料理は「自由」なんですね。レシピにがんじがらめになるのではなくて、自分の創意工夫で新しい料理を生み出せたら楽しいでしょうねえ。食べられるものになるかどうかは、自己責任ですが。


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