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2018年07月10日07:12

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天敵の失敗

 ある「害獣」や「害虫」を駆除するために「天敵」を導入して大失敗、はよく聞く話です。よく聞くということは繰り返されている、ということですが、どうして同じような失敗を繰り返すんでしょうねえ。そういった間抜けな失敗を駆除するための「天敵」って、どこかにないですか?

【ただいま読書中】『天敵ウオッチング ──虫たちの戦争と平和』根本久・和田哲夫 著、 NHK出版、1997年、1300円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4140401419/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4140401419&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=8a917b319b260b13f6e84486fc048855
 「天敵」というと何か特別な存在のようですが、実は身近で見つかるそうです。たとえばテントウムシ。もっと目立たないのではアブラバチ。庭でアブラムシを見つけたら駆除する前によく観察すると、変わった体色のものが見つかることがあります。これはアブラバチに寄生された「マミー(ミイラ)」で、マミーだけを残しておくとやがて体内からアブラバチが次々登場してしばらくアブラムシに悩まされなくて済むそうです。
 ところで「天敵」とは不思議な言葉です。動植物はすべて食物連鎖の中で生きているのですから、食われる側から見たら食う側はすべて「天敵」のはず。昔は「害虫」「益虫」と言っていましたが、この「害虫」を食べる「益虫」のことを最近は「天敵」呼ばわりしているようです。
 ヨーロッパでは1980年代から「天敵の販売」が始まりました。目的は「農薬使用量の削減」。近代農業の環境破壊を少しでも減らそう、という試みです。ちなみにこういった試みをしている国々で評判が悪いのが「農薬依存と常習癖のある国」である日本だそうです。なにしろ殺虫剤は、「害虫」だけではなくて「益虫」まで殺す「環境破壊兵器」ですから。しかし「自然を尊重し、それを巧みに利用して環境に働きかける」のは日本で、「力づくで環境を制御する」のは西洋だったのではありませんでしたっけ?
 「生態系」という視点からは興味深いものがいろいろ「天敵」に見えてきます。たとえば「植物との共同作業」。チリカブトダニはハダニだけを食べますが、ハダニの食害を受けた植物はチリカブトダニを誘引する物質を発生させています。まるでSOS信号です。
 フランスでは「工場」で「天敵」が「生産」されていました。著者が訪れたところでは、トウモロコシの害虫アワノメイガの天敵タマゴコバチと家庭園芸用のナミテントウが生産されていました。エサはどちらもスジコナマダラメイガを使っているそうですが、テントウムシは特にバラ栽培に人気だそうです。
 『ファーブル昆虫記』で「天敵」の不思議さについては教えてもらいましたが、「生態系」は複雑で、単純に「害と益」を二分することは難しそうです。本書でもたくさんの知識をもらいましたが、それを整理するのは大変。「世界」はなかなか人間の思うようには動いてくれないもののようです。


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