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2018年05月03日12:42

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「怠惰の美徳」

読書日記
「怠惰の美徳」
梅崎春生
 作 萩原魚雷 編

若き頃の怠け者としての毎日や、近ごろ家族の周りで起きた出来事を綴ったエッセイ集。これは他の作家でもそうなのだが、自分はエッセイを読むと「そりゃそんなもんだろうよ」「そんなこともあるだろうさ」「それでどうだというんだ」という感想ばかりで痛快感を感じることはあまりない。わざとユーモアたっぷりに失敗談などを書かれると、人畜無害すぎて苦痛になってくる。
この文庫本でもそれは感じるのだが、後半、体験を素材に書かれた「寒い日のこと」「一時期」「飯塚酒場」「百円紙幣」「防波堤」などの短編小説が絶品とも言える味わいでよかった。やはり小説だよなと思う。物みな不足する戦前の暮らしの中で、わずかばかりの酒を売る居酒屋へ何度も走って行列する話など、おかしさと悲しさの絶妙な色調。日常の事件を切り取っていても実は絶望や諦念を含んだ落ち着きがある。それが心地よかった。
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