mixiユーザー(id:2512672)

2018年02月16日21:12

55 view

「天使の恥部」

読書日記
「天使の恥部」
マヌエル・プイグ
 作

奔放な男性遍歴をくり返す世界的な絶世の美女である大女優、故郷ブエノスアイレスを離れメキシコの病院で癌を治療中の女、氷河期に入った未来の地球で患者の性欲処理とデータ収集の服務に着く女性。この3人の物語が入れ替わりながら何度も登場するが、この構成が途中まで判然としなかった。
いずれの女性も現れるであろう理想の男性に思いを馳せていて、結果失意を味わうことになる。また離れて暮らす娘への感情というモチーフがよく出てくる。

大女優の話は奇想天外なエンターテイメントの部分を含むが、入院中の女のほうはひたすら友人や恋人との会話に終始し、その内容は男女間の問題やアルゼンチンの政治的動向に関するもの。これらはやや冗長に感じた。

がぜん面白いのは未来社会で性的な任務に励む女W218の話で、実はスパイである理想の男性LKJSとのめぐりあいとかけひき。そのスリリングな展開。この話でようやくある年齢に達すると相手の心の中を読めるようになる女という設定がいきてくる。
終盤極地の収容所で伝え聞く、離れた娘に会いに行くため氷上で消えて戦火の都会に天使となって現れた女の逸話が、聖なるものの顕現を描いていて、そういうのは大好きだ。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する