西田哲学は難しい。哲学がある程度日常的な言葉の意味を逸脱させることは理解できるが、少し西田は強引すぎるように感じる。「場所」という論文中に次のような表現がある。
「私が此処に力の於いてある場所というのは、物理学者のいわゆる力の場というごときものではない。実在としての力の於いてある場所とともいうべきものは、超越的意識の野ともいうべきものでなければならぬ。この場所に於いて力学的力と経験内容とが合一して物理的力となるのである。」（岩波文庫 西田幾多郎哲学論集�機�101頁）
最後の文はおそらく西田の力に対する感覚を表現したものだろう。それは感覚的なものだから、ある程度素人には訴えるものがあるかもしれない。しかし、哲学者の言葉としては拙劣だという気がする。
一般に力そのものは我々は見ることができない。われわれは力の効果を見ているのである。物体の運動、重いものをもった時の筋肉が感じる重量感や皮膚への圧迫感、これらはすべて力による効果、すなわち西田がここで「経験内容」と言っているものである。力学的力というのはその経験内容から推論した結果のものに過ぎない。マッハが力という概念抜きでも物理学ができると述べたように、力は一種の架空である。
力が経験内容から帰納されたものであるからには、それらが合一して云々というのは奇妙な話なのである。
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