mixiユーザー(id:235184)

2017年11月21日06:58

82 view

世界と戦う前

 今の日本のサッカーは「ワールドカップで一次予選(グループリーグ)を突破してベスト16、いやベスト8になりたい」が悲願となっていますが、「ドーハの悲劇」の前には「アジア最終予選を突破したい」や「韓国に勝ちたい」が悲願だったんですよねえ。昔からのファンとしては、今の「悲願」は時に「贅沢な願い」に思えることもあります。

【ただいま読書中】『飢餓海峡 改訂決定版(下)』水上勉 著、 河出書房新社、2005年、1600円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4309016936/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4309016936&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=dbae16517f5eca57b42da32cad894cbe
 はじめは推理小説か、と思わせておいて、いつのまにか話の中心は「時代と社会に翻弄されるが、その中で懸命にしたたかに生きる女性」になっていました。社会と人生を描く小説です。そもそも最初から犯人はわかっているのですから「謎解き」がメインではないことは上巻の最初に“宣言"されていたのです。
 昭和32年、杉戸八重は舞鶴を訪れます。舞鶴は「引き揚げ者の港」でしたが、この時期にはもう落ちついています。「岸壁の母」はいません。そして話は急展開。
 映画「サイコ」で感じたのと同様の「ショック」を、私は本書でも感じることになります。
 ただ、あまりあらすじに触れると未読の人にはネタバレになってしまうから、ここまで。
 著者が「洞爺丸台風」を昭和29年から昭和22年に移した理由の一つは、「昭和20年代、敗戦直後の日本」をきちんと描いておきたいと考えたからではないでしょうか。たしかに本書には「昭和20年代」がまるで「主人公」のように丸ごときっちりと存在しています。私の脳裏に浮かぶのはモノクロのイメージですが、そのとき生きていた人たちには「現実の世界」。本書にはその「現実」が見事に切り取られています。そういえば、黒澤明監督が「巨匠」になる前の映画群にも「現実」が本当に“リアル"に切り取られていましたっけ。私が生まれる前の日本ですが、その雰囲気に触れることができて、読んで良かった、と思わせてくれる本でした。


0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2017年11月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930