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2017年08月15日18:28

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日本

 「日本犬」「和犬」は私の小さな国語辞典に載っていますが、「日本猫」「和猫」はありませんでした。もしかして日本にいるのはすべて「洋猫」ですか?

【ただいま読書中】『猫の日本史 ──猫と日本人がつむいだ千三百年の物語』桐野作人 編著、 洋泉社、2017年、1050円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4800311306/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4800311306&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=5021bd16db54088f8de861e1bbf1e959
 先日は「犬」だったので、今日は「猫」です。
 日本史には猫の存在感が希薄だ、と本書は始まります。そういえば私もすぐ思い出す古いのはせいぜい『枕草子』からです。
 日本史で最初の「猫」は、宇多天皇の日記に登場する黒猫です。当時の「日記」は「備忘録」で、そこに個人的な思い入れのあるペットが登場するのは異例のことですが、宇多天皇は“異例の天皇”ですから、猫についての詳しい記述を日記の残しても良いのでしょう。
 宇多天皇の時代には菅原道真など不幸な思いをさせられる人がありましたが、一条天皇の時代には藤原道長全盛期ですからこれまた不幸な思いをさせられる人が続出。そういった中、「社交の道具」として猫が注目されていたようです。『枕草子』『源氏物語』そして『更級日記』と「猫の描写」がピックアップされます。そこから読み取れるのは「猫の生態観察」ではなくて「猫をキーとして読み解ける人間関係」です。人は猫に自分の思いを投影しているのです。
 絵にも猫が登場するようになります。最古と言われるのは「信貴山縁起絵巻」で、民家で首輪をして紐につながれた猫が描かれています。
 平安末期になると「猫の生態(特に変わった行動)」についての記述も増えてきます。猫の存在がポピュラーになってきたのかもしれません。
 豊臣政権では「猫を盗むことの禁止令」が布告されています。天下が安定して米などの備蓄も増えると鼠がはびこります。それを捕る益獣として猫が重宝され、それで猫を盗む行為もはびこったということのようです。公家の間でも、猫を貸し借りしての鼠捕りが行われていました。また、犬猫に関する布告がいろいろ出されていますが、それを読むと、この時代までは「犬は放し飼い、猫はつなぐ」だったのが逆転していったことがわかるそうです。
 江戸時代にも猫は鼠対策として重宝されましたが、同時にペットとしての価値も高めていきました。平安時代の貴族は「猫かわいがり」でしたが、江戸時代には「役に立つペット」と言った位置づけだったのかもしれません。近隣とのトラブルや病気になったときの心配、死んだときのお葬式など、現代とそれほど変わらない人々の姿が次々紹介されます。
 あとがきにはちょっと変わった「猫」が登場します。近江屋で坂本龍馬が暗殺されたとき、その血が飛び散った屏風に猫が二匹描いてあるのです。言わば、この猫は「歴史の目撃者」。口がきけたら証言ができるのでしょうにねえ。


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