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2017年07月30日16:38

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フェンダーミラー

 私の記憶では昭和60年頃まで日本の自家用車のほとんどはドアミラーではなくてフェンダーミラーでした。やがてドアミラー車が増えてきましたが、私は視線の移動角度が増えることを嫌って“時代遅れ”のフェンダーミラーを使っていました。だけど、メーカーオプションからフェンダーミラーが消えてしまい、しかたなく現在はドアミラー車に乗っています。
 先日交差点で目の前を通過した空のタクシーに違和感を感じて見つめ直すと、フェンダーミラー車でした。今でも使っている人がいるんだ、とちょっと感動。そういえばドアミラー車がどんどん増えた時期にも、タクシーの多くはフェンダーミラーで頑張っていましたっけ。やっぱり、プロにはわかる利点、というのがあるのでしょうね。

【ただいま読書中】『フォードvsフェラーリ 伝説のル・マン ──黄金の60年代ー自動車王たちの覇権争奪』A・J・ベイム 著、 赤井邦彦・松島三恵子 訳、 祥伝社、2010年、1800円(税別)
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 第二次世界大戦が終了した頃、フォードは苦境に陥っていました。“大衆”は“もっと良い車”を欲しがるようになっていたのです。28歳で会社を継いだヘンリー2世は、会社建て直しを(それまでフォードが採用しなかった)大卒の若者(軍から引き抜いたエリートたち)に託します(その1人が、後に国防長官になるマクナマラです)。50年代を通してフォードは新製品を次々発表し、シボレーと“一騎打ち”を繰り返します。1960年代が始まり、ヘンリー2世はアイアコッカを抜擢。彼はベビーブーマー世代を主要なターゲットとしました。16歳が欲しがるイカした車、です。そして、16歳に訴求するのは「レースでの勝利」でした。
 イタリアのモデナでは、エンツォ・フェラーリが、新しい車の開発に没頭すると共に、息子の病気(筋ジストロフィー)とも闘っていました。著者は意識的にかな、フォードとフェラーリの章で文体を変えています。フォードは叙事的、フェラーリは叙情的、という感じ。フェラーリの章での最初の出来ごとが息子の死ですから、どうしても叙情的に私が受け止めているだけかもしれませんが。
 フェラーリはヨーロッパだけではなくてアメリカ市場での売上増を狙っていました。フォードはアメリカだけではなくてヨーロッパでも売上を増やすことを狙っていました。そのためにはどちらも「自分の車が世界一だ」と主張する必要があります。
 フェラーリはヨーロッパのレースで勝ち続けますが、ドライバーは次々事故死していました。それどころか観客も多数巻き込まれて死ぬ事故があり、イタリアの英雄だったはずのエンツォはイタリアのマスコミに個人攻撃をされるようになりました。そこでエンツォは「フェラーリをフォードに売却する」と発表。フォードはその気で動き始めますが、実はフェラーリから見たらフォードは“当て馬”で、イタリアにフェラーリの“価値”を認めさせるためのパフォーマンスでした。結局交渉は決裂。フォードは怒り、フェラーリの地元でフェラーリを負かすためのレースカーを開発することを決定。決戦の場は1年後の1964年ル・マン。これは、「商売(優勝したら車が売れる)」と同時に「沽券」にかかわる問題だったのです。
 アメリカとヨーロッパの道路事情の違いを反映して、アメリカのカーレースでは大排気量・大馬力で直線に強い車が有利とされ、ヨーロッパではくねくねした道でのハンドリングの正確さと急ブレーキとそこからの立ち上がりの早さが重視されていました。フォードは「未知」に挑戦することになります。長い長い24時間が過ぎ、総合優勝はフェラーリで、フォードのプロトタイプは全滅でした。しかし、GT(量産車のカスタマーカー)クラスではフォードエンジンがフェラーリを打ち破ってしまいます。これは両者に不満を残しました。フェラーリはGTで負けたことで、フォードはチェッカーフラグが得られなかったことで。
 65年のル・マン。フォードは7リットルのエンジンを投入します。迎え撃つフェラーリのエンジンは4リットル。スプリントレースだったらフォードの圧勝です。しかしル・マンは耐久レースでした。ヘンリー2世は社内に「来年のル・マンで買った方が身のためだ」という短いメモを回します。しかしフォードには「ラルフ・ネーダー」という新しい“敵”が登場していました。そして66年。こんどこそフォードの圧勝、という幕切れに、信じられないドラマが演じられてしまいました。
 自動車のレースが、単に「車の速さ」を競うだけのものではないことが生き生きと描かれています。しかし、あまりに人間臭い足の引っ張り合いは、「チームの勝利」の邪魔でしかないんですけどねえ。


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