まるで新幹線のように台風が一気に西日本を駆け抜けていきました。
天気予報を見ていると、洪水の危険性に関して、予報のやり方が変わった、と言っていました。
テレビの画面で見ると、メッシュ表示で「自分の家が危険にさらされているか」が視覚的に把握しやすくなっています。ただこれは逆に「自分の家の地域は危険じゃない」と判断して実はその周囲が危険になっているのを無視して、時間が経つと結局逃げ遅れていました、になる可能性もあるので、「危険だ」と判断できたらすぐ避難するとして、「安全だ」と判断しても一応用心はしておいた方が良さそうです。
ところで画面では、注意報は黄色・警報は赤色・特別警報は紫色で表示されていたのですが、これ、「赤」が目立って「紫」はなんだか青っぽく見えました。これ、私の主観では「赤の方が危険に見える」となってしまいます。ここのところにはもう一工夫いるのではないかしら。
参考サイト：「防災気象情報ハンドブック2017」
http://www.jma-net.go.jp/fukuoka/chosa/handbook/boutei.pdf
【ただいま読書中】『すごろく�機拜�川宏一 著、 法政大学出版局、1995年、2800円（税別）
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4588207911/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4588207911&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=a3c90fcc1040bca45e8d899ee3fd9b87
「すごろく」には「雙六」と「双六」という二つのゲームがある、と本書は始まります。私自身はバクギャモンも「すごろく」の一種だと思っているから驚きませんが、ここで江戸時代の「絵双六」が紹介された後に話が紀元前2600年ころの古代メソポタミアに飛ぶことに驚く人が多いのではないでしょうか。ウル第三王朝の王墓から出土した「ロイヤルゲーム・オブ・ウル」の遊戯盤は、粘土板の遊び方を解読したところ、三角錐型のサイコロを振って二人の競技者がゴールを目指す「レース・ゲーム」でした。ウル第一王朝（紀元前3200年頃）の遺跡からはもっと古い遊戯盤も出土しています。古代エジプトの副葬品には「セネト」という遊戯盤（１０個の枡目３列並んだもの）が多く含まれています。これも「レース・ゲーム」です。人気のあるゲームだったらしく、王族だけではなくて庶民も遊んだことがわかっています。パピルスの解読では、「それぞれのプレイヤーが複数（おそらく５つか７つ）の駒を持つ」「早く，かつ、たくさんの駒をゴールさせた方が勝利」「レースの最中に敵の駒に追いついたらその駒を番外に出せる」「敵に追いつかれても追い出されない安全地帯がある」が基本ルールのようです。新王国時代には少しルールが変更されたようですが、ともかくバックギャモンの祖型です。セネトは古代エジプトではずっと人気を維持していましたが、どうやら葬礼と関係が深い（人が死んだ後たどる冥界の道を模した、最後に再生を迎える）ゲームだったのです。
ギリシア・ローマにもセネトは伝えられたはずですが、「死」に対する見解の相違や象形文字が読めないといった事情から、「ただの盤上遊戯」として扱われたはずです。ギリシア人は立方体のサイコロを用いていて、もっと枡目が多いゲームの方がよろしかったようですが。そのためか、ローマで流行したのは「12枡目×３列」のゲーム盤でした。このゲーム盤はローマ支配下の各地から出土しています。
ところがゲーム盤はやがて「12枡目×２列」に変化します。せっかちな賭博師たちが、スピーディーな勝負を好んだのかもしれません。さいころの数、駒の数や配置、勝敗のルールも様々ありました。そして中世ヨーロッパの人々はこの「レース・ゲーム」を広く愛好していました。しかしこの「賭博」を敵視する修道士たちは、15世紀にあちこちの中世都市で「焼き尽くし（フェアブレンヌンク）」という行動をします。本だったら「焚書」に相当する行動です。アウクスブルクでは1454年9月25日に「1300面の遊戯盤とさいころ」が焼かれ、ニュルンベルクでは「3640面より少なくない遊戯盤と４万個以上のさいころ、数え切れないトランプ」が焼かれたそうです。
それでも「レース・ゲーム」（と賭博）の人気は衰えず、15〜16世紀には「トリックトラック」というゲームが大人気となり、それがバクギャモンになっていき、18世紀には現代とほぼ同じルールで遊ばれるようになりました。しかし18世紀末にヨーロッパではバクギャモンの人気は下火に。そのかわりのようにアメリカでバクギャモンの人気に火がつきました。しかしバクギャモンはやがて「賭博」から「家庭での遊戯」にその位置を変えていきます。
ササン朝ペルシアからインドに同じゲーム盤を使う「ナルド」というゲームが伝えられました（将棋と逆コースです）。イスラム圏でもナルドはチェスと同じくらい愛好されていました。しかし古代インドではナルドは流行しませんでした。すでに多数の盤上遊戯があったからかもしれません。しかしインド周囲でナルドは生き残ります。中国にはシルクロードを通って西暦700年頃には到達していました。交易の道は、遊戯伝達の道でもあったようです。中国でナルドは「双陸」と呼ばれ、賭博として流行しました。本書に収載されている史料からは、様々なバリエーションが考案されていたことがわかります。
「日本書紀」では持統天皇の時代に「雙六禁断」とあります。逆に言えば、雙六が遊ばれていてしかも禁令が必要なくらい流行していた。正倉院には雙六盤が保存されています。ただ古代日本では文字史料が乏しいので、遊戯のルールがはっきりしないのが残念です。中世には雙六が賭博として大流行したことが史料からわかります。15世紀後半〜16世紀、外国から「バクギャモン」が伝来します。ヨーロッパ人は日本の雙六を見た瞬間それが「バクギャモン」であると理解しました。ゲームに言葉の壁はなかったようです。賭博をする場合ローカルルールは壁になったかもしれませんが。江戸幕府は特に侍に対して雙六の禁止令を出しました。たぶんこれは「賭博禁止令」の一環だったのではないでしょうか。19世紀になると雙六の遊び方の本が出版されます。著者はこれを「雙六の人気が落ちて、簡単に友人などから教わることができなくなったからではないか」と考えています。これは「絵双六」の人気が高まったことによるのではないか、と。明治になって雙六は衰退しましたが、そのかわりのようにバクギャモンが遊ばれるようになりました。
ということで、絵双六については『すごろく�供戮鯑匹泙覆韻譴个覆蕕覆い茲Δ任后�たかがすごろく、と思いましたが、ここまでスケールの大きな話だとは思いませんでした。先が楽しみです。
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