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2017年06月23日07:32

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次はどこ?

 かつて日本には「家電メーカー」がたくさんありました。しかし、サンヨー、シャープ、そして東芝とどんどん“斜陽”になってしまいました。次はどこか?が私の心配です。これは「家電メーカー」のどれ(ソニー? まさかパナソニック?)が次にずっこけるのか、ということと同時に、次はどのジャンル(半導体? まさか自動車?)のメーカーが次々倒れるようになるのか、という心配も含んでいます。

【ただいま読書中】『エイダ』山田正紀 著、 早川書房、1994年、1942円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4152078685/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4152078685&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=7e9dae5e1a6d31333295621b9dd0093c
 先日読書した『バベッジのコンピュータ』で重要な登場人物だったエイダを主人公に据えたSF小説です。同じくSFの『ディファレンス・エンジン』は8年くらい前に読んでいますが、再読する気で図書館から借りてきて、その前に“準備運動”として本書を読むことにしました。
 ササン王朝で“王の舌”として物語を無限に語ることができるハザールハッドに自分の物語を語ろうとする“脳漿をむさぼる蛇”アジダハーク。死の床にある杉田玄白に、蝦夷地で出会った怪異を語る間宮林蔵。その怪異で「メアリー・シェリーに語られてしまった以上、自分は存在するしかない」と間宮林蔵に語る魔物。陰鬱で不思議なオープニングです。そしてやっと「エイダ」が始まる、と思ったら、まず登場するのはチャールズ・ディケンズ。まだ「文豪」ではなくて21歳の新聞の通信員。そして彼が向かうのは、機械式計算機を製作しているチャールズ・バベッジのサロンです。そしてそこで出会ったのが、階差機械の模型に魅了されている美少女、オーガスタ・エイダ。いやいや、やっと登場ですか。もっとも『アンナ・カレーニナ』だったかな、主人公が登場するまで第一巻の半分くらいかけたものもあるから、まだこれなら短い方なのかもしれません。
 しかし、シャーロック・ホームズがコナン・ドイルに語る「フランケンシュタイン連続殺人」の謎は、抱腹絶倒するべきか戦慄するべきか、私は悩んでしまいます。
 本書では「宇宙論」でさえ「物語」です。異なる宇宙論では別の宇宙が“実在”するのですが、一つの宇宙を二つのまったく異なる宇宙論で説明することは不可能です。だったら、どちらの宇宙論が生き残るのか、そこで起きる闘いは、「現実」と「フィクション」の浸食という形を取ります。フィクションを物語る行為は「別の現実」を生み、その「現実」はまた別のフィクション(または「別の現実」)によって浸食されていくのです。
 こんな設定をしてしまうと、本書は「何でもあり」になってしまいます。どんなでたらめでも許されることになってしまいますから。逆に、そこまで大風呂敷を広げておいてから、どうやってうまく畳むのか、それが著者の腕の見せ所、となるのでしょう。
 エイダは子宮癌で苦しみ、ワープ航法プログラムの「エイダ」は暴走します。超伝導大型粒子加速器の「エイダ」の内部には、無数の「物語(あるいは現実)」が詰まっています。量子コンピュータの現実創造プログラム「エイダ」はフランケンシュタインの怪物を創造してしまいます。そして、本書冒頭に登場したゾロアスター神話が最後にまた形を変えて再登場。なんとか強引に物語にケリをつけてしまいました。いやいや、本書の疾走感はなかなかのものでした。まさか著者本人まで乱入してきて大活躍するとは思いませんでした。大サービスですね。


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