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2017年06月07日07:16

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否認

 この世を認識するやり方はいろいろありますが、否定によって世界を認識するしか手段がない、というのは、ずいぶんしんどい生き方であるように私には感じられます。

【ただいま読書中】『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン(下)』ピーター・トライアス 著、 中原尚哉 訳、 早川書房(ハヤカワ文庫SF2099)、2016年、700円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4150120994/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150120994&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=0b318e53a2605e23a19dafd800b32258
 「頭は切れるけれど腕っ節はからっきりの男」と「おつむは単純だけど暴力行為はプロ中のプロの女」のペア、と言えばSFや冒険小説ではそれほど珍しくなくなりましたが、その両者がそれぞれ心(と体)に傷を負っていて、どちらも「天皇陛下の赤子」を自認する愛国者なのにどちらも純粋な日本人ではない、というのが本書の面白さの一部を支えています。そしてその二人は、命を賭けた追跡行(あるいは逃避行)を日本支配下の悪夢のようなアメリカ社会で続行します。
 ちなみに、その「悪夢」を支えている人たちに、アメリカのレジスタンスやギャングなどだけではなくて、日本軍の退役軍人も混じっているところが、皮肉が効いています。
 本書では、時に時間が巻き戻されます。そして最後に28年前に巻き戻されたとき、ベンが抱えていた心の傷について、驚愕の真実が。さらに「アメリカン・ドリーム」ということばに、本来は今のとは別の意味(願い)がこめられていたことを私は知ります。USJでもUSAでもすでに切ない願いとなってしまっていますが、人は「アメリカの理想」が何だったのか、もう一度思い出したほうが良い、と感じました。たとえばトランプ大統領の「アメリカ・ファースト」がいかに薄っぺらい言葉であるか、も本書は気づかせてくれるでしょう。トランプ政権にとって本書は、実は「危険な本」かもしれません。


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