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2017年04月05日06:51

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女は黙っていろ

 戦前の価値体系を絶賛する人がいます。もちろん言論や思想の自由がありますし趣味嗜好は自由自在ですから何を好もうと自由なんですが、私が不思議なのは、女性の政治家でもそういったことを公言する人がいること。
 もしああいった価値体系に人々が従うべきだと主張するのだったら、まずご自身からそれを実践してみて欲しいな、と私は思います。戦前の価値体系に「男>女」があることはご存じですよね? 戦前の民法では「戸主は男」「女には財産の処分権はない」がキマリでした(例外的に「一家に男が一人もいない」場合には「女戸主」も認められましたが、誰か男が(養子などで)入ってきたら、基本的に戸主の座はその男に渡されなければなりません)。被選挙権も選挙権も女にはありません。
 ということで、“そういった女性政治家”は「女は家に引っ込んでいろ」「女は良妻賢母以外には価値無し」「政治に女は口を出すな」を自主的に“実践”してください。他人に強制する前にね。(誤解の余地はないと思うけれど、私はこういった要求は「戦前のモラルに従うべきだ」と主張する女性に対してだけ、おこなっています。「自分は正しい」のだったら、まず「自分」がその「正しさ」を味わうべきだ、が私の主張です)

【ただいま読書中】『世界の小さな終末』モルデカイ・ロシュワルト 著、 志摩隆 訳、 早川書房、1964年、360円
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 小さくても大きくても「世界の終末」は困ったものだ、とタイトルに一回だけツッコミを入れてから私は本を開きます。
 冷戦まっただ中の北極海。氷の下に「ポラー・ライオン号」というポラリス原子力潜水艦が潜んでいました。目的は「報復」。もしソ連がアメリカに核攻撃をしてきたら、搭載している16基の潜水艦発射式の核ミサイルをソ連本土にお見舞いするのです。
 ジェラルド・ブラウン少佐は、人生で常に「2番目」でした。家では次男。クラスでは副委員長。女の子から見たら「2番目のボーイフレンド」。そして海軍でも「副艦長」。やっと艦長に昇進する絶好の機会がやって来ましたが、艦隊司令部はジェラルドよりも後輩の少佐に艦長の座を与えてしまいます。ジェラルドは欲求不満の炎に苦しめられます。しかし海軍や国に対する忠誠心を揺るがせるわけにはいきません。そのためか、ジェラルドの内心で欲求不満は奇妙な変質を始めます。
 事件勃発。“事故”でジェラルドは艦長を殺してしまいます。自動的に副館長(つまりジェラルド)が艦長代理に昇進。素直に軍法会議にかけられる気が無いジェラルドは、自分が「力」を持っていることに気づきます。世界のどこでも「核ミサイルをお見舞いするぞ」と脅かすことができる「力」です。そこでジェラルドが選択したのが「海賊になる」でした。
 ここで私が思い出したのが「ノーラの箱船」(御厨さと美)という漫画です。こちらは原子力空母が搭載している核ミサイルや航空戦力を“武器”に世界を脅迫していましたっけ。ただしこちらは「海賊」ではありませんでしたが。
 「原潜」を「海賊船」にするのは、ジェラルドには非常に魅力的なアイデアに思えました。それぞれに“弱点”を抱えた部下の4人の大尉たちも仲間になります。では他の乗組員は? 金と女と酒で、9割の乗組員はジェラルドに従うことになります。
 海軍や大統領は不祥事を隠蔽しようとします。しかしジェラルドは公開しようとします。いやもう、このへんの駆け引きは抱腹絶倒。間にはさまったロスアンジェルス市長は、ハリウッドスターを7人ライオン号に差し出す役回りを押しつけられてしまいます。
 ここで大笑いなのは「核報復の論理」が、そのままライオン号によって使用されていることです。もしもアメリカ軍がライオン号を攻撃したら(あるいは攻撃をするそぶりをしたら)、ライオン号は即座に核ミサイルを発射します。先制攻撃はしません。そんなことをしたら、せっかくの「海賊の豊かな生活」がおじゃんですから。つまり、核保有国が主張している「核による戰争抑止の理論」がそのまま「海賊」によって主張されているわけで、それに反論するのは(少なくとも「核による戦争抑止」を唱えている人には)困難です。自分に反論しなくちゃいけませんから。このへんの風刺は絶妙です。
 「プラフではないぞ」ということを証明するために、ついにミサイルが発射されます。予告を受けていた住民が疎開していたため空っぽになっていたサンタ・アンジェリカは完全に破壊。そして海賊船はアメリカを離れて世界を航海しはじめます。アメリカでは新たな「海賊船」を予防するために、「忠誠心」を「宗教的な厳格さ」に求め、狂信的な軍人を核ミサイルを扱う部署に集めますが、するとこんどは「神のために聖戦を戦う」空軍戦略ミサイル大隊(核十字軍)が出現してしまいます。要求は「禁酒」「テレビの好色番組の禁止」「ナイトクラブやキャバレーの閉鎖」で、それをアメリカ政府が行わないと、ニューヨーク・ハリウッド、さらにはシカゴやデトロイトにミサイルを降らせる、というのです。教会は「その目的には賛成だが、核ミサイルで脅迫することには反対」と声明を出しますが、核十字軍は連邦政府を脅迫して教会を黙らせます。さらに、アメリカだけではなくて全世界に自分たちのモラルを押しつけ始めます。おかげでライオン号の影は薄くなり、ジェラルドは焦り、大統領の娘を自分の妻として寄こせ、と要求。すると核十字軍は、ソ連を脅迫。ソ連は問題の空軍基地をミサイル攻撃するとアメリカ政府に通告。アメリカ政府はそれを拒絶。
 そして「世界の小さな終末」が訪れます。
 風刺小説の形を取っていますが、読んでいて恐くなる政治小説でもあります。一番恐ろしいのは、この小説の本質が、発表から半世紀以上経った21世紀になっても全然古びていないこと。人類は「核を用いる論理」に関しては全然進歩していないようです。


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