ヘッドホンの予備調査

　ヘッドホンが欲しくなりました。最近は試聴もできるようになりましたが、それでもうるさい店内ではどこまでそれぞれの特性がわかるものかは疑問です。本当は静かな環境でいろんな曲をそれぞれのヘッドホンで聴かないと、自分に最適のものはわからないとは思うのですが、少しは予備知識もあった方がよかろう、と本書を手に取りました。

【ただいま読書中】『あなたのヘッドホンはアーティストの息づかいが聴こえていますか？』小林和幸　著、　秀和システム、2016年、1300円（税別）
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　音楽用のヘッドホンで「音を出す部分」は「ドライバ」と呼ばれ、大きく三種類に分類されますが、まず「スピーカーに比較したら、とても小さいドライバであること」を理解する必要があるそうです。基本的にドライバには「大型の方が低音再生が得意、小型の方が高音再生が得意」という一般論がありますが、ヘッドホンの「大型ドライバ」はスピーカーに比較したら小型のため、低音から高音まで割と出しやすい，ということになります（ただし、ドライバが丁寧に作り込まれていたら、ですが）。
　ダイナミック型ドライバは、古くからヘッドホン（とスピーカーシステム）に採用されています。ヘッドホンで低音から高音までまずまずの音質で聞くことが期待できます。
　バランスト・アーマチュア（BA）型ドライバは、もともとは補聴器用のドライバとして開発されました。高音は得意ですが低音は苦手です。ただ、カナル型（耳栓の形）のドライバを外耳道にきっちり差し込んで空間を密閉することで低音がきれいに出るようになります（つまり，このタイプのイヤホンで良く聞こえない場合には、耳への差し込み方に問題がある可能性があります）。
　静電型ドライバは、低音から高音までフラットで歪みのない音が再生できる優れものですが、高い電圧の信号でないと音量が出せないため専用のドライバアンプが必要になるという難点があります。
　形は、オーバーヘッド型、インナーイヤー型、カナル型に大別できます。また、密閉型と開放型があり、開放型は「音漏れ」が必ずあります。
　本書ではインピーダンスや歪み率についての物理学的な説明もけっこうわかりやすく書いてあります。でも、わからなければ、読み飛ばしても問題はないでしょう。
　音像定位では、スピーカーシステムで「スピーカーがないところからも音が聞こえる」なんて言われる場合がありますが、ヘッドホンではそれはありません。オーケストラは「自分の眼前」ではなくて「頭の中」で演奏します。
　「自分に合ったヘッドホン」で重要なのは「スペックの優劣」ではなくて「音楽のジャンルとヘッドホンとの相性」と著者は言います（その前提として「周波数特性がフラットで低音から高音まで再生できる」「歪みが少ない」「長く装着しても疲れない」という前提条件がクリアされている必要はあります）。ロックやJ-POPでは、ドラムセットがきれいに鳴るかどうかが重要です。またロックでは大音量が再生できるか、も。すると最適なのは「大口径ダイナミック型ドライバの開放型オーバーヘッド型ヘッドホン」となります。ボーカル重視なら、中域周波数と「サ行」の高い周波数成分の再生が得意な「カナル型BA型ドライバヘッドホン」か「小口径ダイナミック型ドライバの開放型インナーイヤー型ヘッドホン」からの選択が勧められています。エレクトロミュージックやクラシックでもそれぞれ別の選択肢が示されます。
　すると私は困るんです。だって、ほとんどノンジャンルで音楽を楽しんでいますから。私のiTunesには、クラシック・ジャズ・ボーカル・古楽・ロック・フォーク・童謡・フュージョン……本当に何でもありなんです。困ったなあ。
　場所と用途での選択も本書には書いてあります。あ、これは私にも参考になります。私が一番ヘッドホンを使うのは、新幹線などの長距離移動で回りがうるさいところ。となると、密閉型でノイズキャンセリング機能がついているオーバーヘッド型、ということになりそうです。今使っているものがもうだいぶ傷んでいるので、こんどはワイヤレスにでもしようかな。