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2017年02月06日07:04

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美味

 世界の三大基本美味は「塩」「砂糖」「脂」だそうです。どれもたしかに「美味しい」けれど、どれも食べ過ぎには注意、ですねえ。困ったものです。

【ただいま読書中】『脂肪の歴史』ミシェル・フィリポフ 著、 服部千佳子 訳、 原書房、2016年、2200円(税別)
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 狩猟社会で脂肪は「価値あるもの」でした。現在でも、カラハリ砂漠のクンサン族、タンザニアのハッザ族、コンゴのムブティ・ピグミー族などでは、動物の脂肪分が多い部分を食べる優先権は男性の狩人に与えられています。
 古代ローマの饗宴では、脂肪分の多い「ご馳走」を並べることが「富と権力の象徴」とされました。面白いのは、ローマ貴族にとってバターは「野蛮人の食べもの」でオリーブオイルが貴重なものだったことです。メソポタミアではバターは重要だったのですが。
 歴史的に地位の高さは「肥満(=たっぷり食べている)」で示されました。その「たっぷり」ははじめは「食物の量」で示されましたが、ヨーロッパでは17世紀ころから「料理法」で示されるようになります。特に「バターや脂肪ベースのこってりしたソース」が重要となりました。さらにそれは文化的な「上品な繊細さ」にフランスで進化します。ソースの主要な材料がバターであることは変わりませんでしたが。
 キリスト教の四旬節は断食期間ですがその前日は「脂肪の火曜日」と呼ばれることがあります(ついでですが、カーニバルの日でもあります)。四旬節は肉(と脂肪)が禁じられるため、その前日にたっぷり食べておこう、というわけです。もっとも裕福な信者は教会から特免状を“買う”ことで四旬節の間も肉食ができたのですが。
 脂肪の使用目的に「保存」があります。脂肪層で外気を遮断してして防腐を期待するやり方で、肉の脂肪そのもので包むコンフィやオリーブオイル漬けなどが知られています。
 炒め物や揚げ物は世界中にありますが、写真を見ているだけで腹が減ります。アメリカのファーストフードで、フライドチキンやフライドポテトなどはどのくらいの消費量なんだろう、と思いますね。感謝祭の七面鳥にも「揚げ物ブーム」が押しかけているそうです。10ポンドの七面鳥を調理するのに、オーブンだと3時間なのが揚げると35分ですむのが人気の秘密だそうです(その代わり大量の油が必要になりますが)。
 20世紀後半にアメリカでは動物脂肪は「ワルモノ」認定されました。「コレステロールが心臓病を引き起こす」とされ、植物油が称揚されました。ところが1990年ころに「トランス脂肪酸」に対する攻撃が始まり全米でマーガリンの売り上げはどかんと減ります。それと同時に「専門家や政府の食生活指導に対する不信感」が醸成されてしまいました。「言うことがころころ変わる」というわけです。
 食品加工会社が脂肪をどう扱っているかは、他書でも散々触れられているので、ここでは省略。
 私にとって面白かったのは、「食べものはしばしば『児童文学のセックス』と呼ばれる」という指摘です。具体的な描写が延々と続き、それがフェティシズムの対象となることがセックス描写と共通しているのだそうです。なるほど。
 バター彫刻の写真もあります(日本だったら氷の彫刻にするかもしれません)。しかし大量のバターはインパクトがあります。現代美術からも脂肪を扱ったものが紹介されます。食品としてだけではなくて、私たちの社会は「脂まみれ」なのかもしれません。そういえば私の皮下にも脂が……


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