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2016年12月21日07:13

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歴史のドアマン

 歴史の「扉」を開いた人が、その扉を通って中に入ってそこで新発見ができるとは限りません。「扉を開くだけ」がその人の“任務”のことがあります。

【ただいま読書中】『都市と星』アーサー・C・クラーク 著、 山高昭 訳、 早川書房、1977年(90年17刷)、505円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4150102716/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150102716&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 銀河帝国はすでに滅亡し、地球の海も干上がって惑星全体が砂漠化した超未来。地球に唯一の「永遠の都」ダイアスパーでは、人びとは「情報」として機械の中に眠り、時に肉体を与えられて「人生」を生きる、を繰り返していました(だからダイアスパーの住人には「へそ」がありません)。しかし「ユニーク」な存在が生まれます。これまでの過去を一切持たない子供アルヴィンです。
 これはつまり「転生輪廻の罠」から“解脱”している存在が主人公、ということです。
 アルヴィンはついにダイアスパーを脱出し、リスという社会を発見します(あるいはリスに発見されます)。ダイアスパーは科学・技術・人工の極致の都会でしたが、リスはその対極で、自然と精神性の村でした。アルヴィンはそこで何億年も前の超技術に出会い、ダイアスパーに戻ります。そこから“出発”するために。
 ついに宇宙に出たアルヴィンは、そこで「知性」と出会うことを期待します。その期待は、ちょっと不思議な形で叶えられることになりました。アルヴィンは人類に対して「宇宙への扉」を開いたのですが、彼自身は地球に留まることを決意したのです。
 アーサー・C・クラーク“節”が全開の作品です。やや都合が良い展開も目立ちますが、「宇宙」と「人」との関係を緊迫感と詩情を持って描かせたら、著者の右に出る人は今でもなかなかいないだろう、と私には思えます。著者はどんな目とどんな思考回路で宇宙を眺めていたのでしょうねえ。


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