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2016年12月16日07:19

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ネット全盛時代

 「今雨が降っているかな?」と思ったら、耳を澄ましたり窓の外を見たりするのではなくて、ネットでお天気サイトをチェックする人が増える社会。

【ただいま読書中】『メアリー・スチュアート』アレクサンドル・デュマ 著、 田房直子 訳、 作品社、2008年、2400円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4861821983/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4861821983&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 一体何を思ってこの本を図書館に予約したんだろう、と少し前の自分自身の心理を不思議に思いながら読み始めました。
 前年に母と夫を亡くした19歳のメアリー・スチュアートは、1561年8月9日にフランス王室未亡人として、またスコットランド女王として、宗教戦争で乱れている故国スコットランドに戻る船出をしました。喪服に身を包んだメアリーはとても美しく、男たちを夢中にさせ、そのため命を失う羽目に陥るものも多くいました。
 ここですでにメアリーの人物像が明確にされています。寡婦年金を得てフランスで安穏と暮らす選択肢もあったのにそれを捨てて動乱のスコットランドに戻る、という行為が彼女について明確な主張をしています。
 メアリーは、ハンサムで上品(でも中身は空っぽ)の若者ダーンリーに一目惚れ、結婚をします。しかし失望の日々。ダーンリーもまた失望をしていました。「女王の配偶者」ではなくて「国王」になりたかったのに、メアリーがそれを許さないのですから。ダーンリーの鬱憤はメアリーの寵臣リッチオに向けられ、暗殺が実行されます。メアリーは夫を嫌悪しますが、そういった内紛を喜んでいたのが、イングランド女王のエリザベスでした。
 ダーンリーは爆殺され、その主犯と強く疑われていたボスウェル(メアリーはカトリックなのに、こちらはプロテスタント)とメアリーは結婚をします。しかしこの結婚生活も不幸の連続。臣下の面前で公然と行われる夫婦喧嘩は貴族たちを「反ボスウェル同盟」へと狩り立てます。そしてついにメアリーはロッホリーヴェン城に幽閉の身となってしまいます。そこで「譲位」の書類に“自発的”なサインをさせられ、女王は元女王になります。そして脱出。メアリーは自分に忠実な軍とともに摂政軍と戦いますが、あまりに拙劣な軍略のため、無残な敗北を喫します。失意のままイングランドへ亡命。しかし「姉上様」と頼りにしていたエリザベス女王には、自分の思惑がありました。
 「白い喪服」で始まった本書は(メアリーの召使いたちが身を包む)「黒い喪服」で終わります。
 著者が読者としていた当時の人びとは、身分や階級がほぼ固定された社会に生きていて、“違う世界”の人のことなど知る術はありませんでした。そこに「女王でも恋をするし間違いも犯す」という話を投入したのですから、下手したら“不敬罪”ものです。それを「愛するフランスを離れたために不幸になった人」を主人公にすることで著者はみごとにクリアしています。もっとも本書が当時の英国人にどのように読まれたか、まではわかりませんが。


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