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2016年12月12日06:39

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絶対的な音感

 「絶対音感」がある人は、多くのオーケストラが「A」の基準としている「440Hz」と、たとえばベルリンフィルが採用している「443Hz」の「A」を聞き分けることができるのでしょうか?

【ただいま読書中】『絶対音感神話 ──科学で解き明かすほんとうの姿』宮崎謙一 著、 化学同人、2014年、1900円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4759813608/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4759813608&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 著者は認知心理学と聴覚心理学の立場から絶対音感を研究していますが、世間で「絶対音感」に関する「神話」が多すぎることが問題だと感じているそうです。そこで「事実」に基づいた解説を、と本書が書かれました。
 絶対音感には「仮性」と「真性」があるそうです。「仮性」は「一つの音のピッチを正確に身につけていて、他の音はそこから相対的に導いて正しく判断する」能力で「真性」は「どの音でも即座に正しく判断できる」。だからこの二つを見分けるのは意外に簡単で、テストをして正解を出すまでの時間を測定したらすぐ分けることができるそうです。カナダのマッギル大学の実験では、絶対音感を持たない素人でも好きな曲の好きなフレーズなら正しい音程で歌える人が1/4いたそうで、人間は意外に「正しい音の高さ」を長期記憶にしまい込むことができるようです。
 絶対音感がある人は「すべての音の高さがわかる」そうです。そのため、救急車のサイレンなど身近な音もすべて「ドレミ」で聞こえる。これって便利なんですかね?
 「神話」では「絶対音感を持つ人はきわめて音楽的」となっていますが、著者はこれに疑念を呈します。「音楽」は「絶対音高」の組み合わせでできているわけではない、と。実際、私たちは出だしのキーが“狂って”いても相対的な音が合っていれば「同じ曲」だと認識できますよね。つまり「音」と「音楽」とは違うものなのです。
 これは「英語の単語の意味をすべて瞬時にわかる人は、英語の詩を鑑賞できるか」とか「色のRGBを瞬時に判別できる人は、油絵を楽しく鑑賞できるか」という質問にしたら少しわかりやすくなるかもしれません。「一つ一つの音符」を正確に判別できることと「音符の連なり(=音楽)」を楽しめることとは別の問題ですから。
 専門的な記述が多く、ちと素人には読みにくい本でしたが,わかるところだけ読むだけでも面白い本でした。根拠無く神話や思い込みに縛られてはいけない、ということがわかるだけでも収穫です。


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