mixiユーザー(id:235184)

2016年12月10日07:02

228 view

クーデターと愛国

 クーデターで政権を奪取した軍事政権が「愛国」を言う場合、それはもちろん「愛軍事政権」のことですよね?

【ただいま読書中】『戒厳令下チリ潜入記 ──ある映画監督の冒険』G・ガルシア=マルケス 著、 後藤政子 訳、 岩波新書(黄)359、1986年(87年4刷)、480円
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4004203597/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4004203597&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 アジェンデ政権を支持(つまり軍事政権には反対を表明)していた映画監督ミゲル・リティンは亡命をしましたが、軍事政権は彼の帰国を許そうとはしませんでした。そこで姿形を変え、偽名と偽造パスポートを使って、彼は祖国に密入国をします。入国をするだけではなくて、チリで映画を撮影して、軍事政権下のチリがどのようなものかを世界に知らせよう、という企てです。
 まずは、イタリア・フランス・オランダの映画撮影チームをチリに別々に送り込みます。それぞれきちんと軍事政権に公認された撮影隊です。そしてそれを追ってミゲル・リティンが入国。自身が撮影対象になると同時に総監督としてすべての撮影チームを管理しよう、というのです。
 プロのスパイのような活動です。しかも、監視兵の目の前で堂々と映画撮影をするのですから、勇気があるというか、無謀というか…… ただ、変装はほぼ完璧で、街で偶然すれ違った義母や叔母には全然気づかれませんでした。ふだんから演技に触れているので、自分が演技をするのも全くの素人よりは上手だったのかもしれません。とうとう生家に行って母親に挨拶をしますが、母親さえ目の前に人間が誰かわからない有様です。
 しかしこういった「偽装」は、ミゲル・リティンには大変な苦痛だったようです。「表現」のプロとしては「偽装」は「欺瞞」でしかないのでしょうね。
 しかし、レジスタンスと会ったり、軍内部の不満分子とのインタビューをしようとしたり、危ない橋を渡りすぎです。まるで冒険小説のようですが、小説と違うのは、話の展開がもたもたとしてなかなかすっきりしないことと、主人公がドジを踏みまくること。だけどそれが「現実」なんですよね。そうそう、本書には「軍事政権を支える若い世代の軍人には、以前の民主政権の記憶が無いため、かえって政権交代が容易に行えそうだ」という興味深い指摘があります。


0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年12月>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031