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2016年11月29日06:53

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野蛮人

 大航海時代に「非キリスト教徒は人間ではない、人間であっても野蛮人だから、どんな扱いをしても許される」という思想がヨーロッパにありました。もしその思想が正しいのなら、古代ローマ時代に「野蛮人」だったヨーロッパの多くの人びと(現在のヨーロッパ人の先祖たち)はどんな扱いを受けても一切文句は言わなかった(叛乱など起こさなかった)ということなんでしょうね。

【ただいま読書中】『I AM ZLATAN ──ズラタン・イブラヒモビッチ自伝』ズラタン・イブラヒモビッチ、ダビド・ラーゲルクランツ 著、 沖山ナオミ 訳、 東邦出版、2012年、1800円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4809410765/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4809410765&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 破天荒なストライカーで、アヤックス、ユベントス、インテル、バルセロナ、ミランと渡り歩いたチームのすべてをリーグ優勝に導いたサッカー選手の“肉声”の自伝です。「少年がゲットーを抜け出すことは簡単だが、少年の心からゲットーを取り去ることはできない」で始まり、「少年がローセンゴードを抜け出すことは簡単だが、少年の心からローセンゴードを取り去ることはできない。ズラタン」で終わります。
 著者の父親は、ユーゴスラビア紛争で旧ユーゴを脱出、スウェーデンに落ちつきます。そこで出会ったクロアチア生まれの女性との間に生まれたのが著者ですが、その家庭は明らかに機能不全を起こしています。著者はずいぶん軽く描写しますが、明らかな児童虐待(肉体的あるいは言葉による暴力やネグレクト)があります。
 街では、万引きや自転車泥棒(ただし薬物には手を出していないそうです)、ピッチ上では頭突きや肘うち(ただしやられたからやり返しただけ、だそうです)を熱心にしていた少年は、奔放なプレイスタイルを認められ、マルメFFという一流チームと契約することになります。ところがマルメは二部降格。ベテランは続々チームを離れます。しかし「だからこそ先発出場のチャンスが増える」と読んだ著者は残留。実際にそこで大活躍して1年でチームは1部に復帰。著者にはオランダのアヤックスから声がかかります。
 著者は「一見ワルだけど、根は良い子なんだよ」と表現されるタイプのようですが、規律を重んじる格式高いチームでは思いっきり使いづらい選手だったでしょうね。特に「復讐」が彼の行動では重要な動機となっています。肉体的にやり返すだけではなくて、欺瞞・侮辱・非難・的外れの批判などに対して、実際のプレイで「どうだ」と示すのが彼にとっての「復讐」となっています。それで結局チームはリーグ優勝するのですから、本当に「復讐」になっているのかどうかはわかりませんが。
 インテル時代、初めての子供が生まれた翌日、前夜は病院で過ごしてほとんど寝てなくてふらふらでスタジアムに行ったら、観客席に「ようこそマキシミリアン」の横断幕が。「マキシミリアン」は著者の初めての息子につけた名前です。これはぐっときたでしょうね。私は2006年の広島市民球場に掲げられた「我々は共に闘ってきた 今までもこれからも・・・ 未来へ輝くその日まで 君が涙を流すなら 君の涙になってやる カープのエース 黒田博樹」の横断幕を思い出していました。
 監督や同僚との衝突など、けっこう具体的に生々しく描写されています。ただ、監督や同僚などには著者とは別の言い分があったに違いないですが。私のように「イブラ」に特に個人的な思い入れがない人間にとっては、サッカーの裏話として読んでも面白い本でした。


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