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2016年11月26日07:17

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プレゼント

 人に何かをプレゼントして喜ばれるためには、相手が持っているものではなくて、相手が持っていないものをまず選択し、次に、相手がそれをもらうことで喜ぶものを選択する必要があります。

【ただいま読書中】『黒のトイフェル(下)』フランク・シェッツィング 著、 北川和代 訳、 早川書房、2009年、700円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/415041193X/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=415041193X&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 陰謀の正体は、「皇帝」「教皇」「大司教」の複雑な権力闘争と、ケルンの領主である大司教とケルンの実質的な運営者である貴族たちとの複雑な権力闘争との“隙間”に生じていました。物語は「歴史冒険小説」として派手に進行しますが、それと同時に「行き当たりばったりに逃げ回っているだけのケチなこそどろ」であるヤコプが、実は悲しい過去を持っていてそこから逃げているからこそそういったライフスタイルになってしまったことがわかると、こんどは「教養小説(人の成長を描く小説)」の側面を浮かび上がらせてきます。さらにこの「ヤコプが自分の過去から逃げていること」は重大な伏線としてあとに効いてきます。
 また、「自分自身の意見を持たず、物事の表面を断片的にだけ眺め、単純な言葉で世界がわかったつもりになる人びと」は善悪関係無しに多く存在することも示され、これは13世紀に限ったことではない、と私には感じられます。
 複雑だけどシンプル、重厚だけどユーモアもたっぷりあり、これは本当に秀作です。再読して良かった。


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