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2016年11月20日07:16

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成分名と製品名

 「成分に○○を使っているなら商品名にその名称を使って良い」というルールがあった場合、原料の一部にブドウ糖を使ったらその食品の製品名を「ブドウなんちゃら」として良いでしょうか?

【ただいま読書中】『フードトラップ ──食品に仕掛けられた至福の罠』マイケル・モス 著、 本間徳子 訳、 日系BP社、2014年、2000円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4822250091/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4822250091&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 清涼飲料水を開発するとき、企業は「至福ポイント(糖分・塩分・脂肪分の配合がある値にぴたりと一致して、消費者が「もっと飲みたい」と思うようになるポイント)」を重視します。会社にとって「糖」「塩」「脂肪」は「重大な兵器」で、それは清涼飲料水だけの話ではありません。アメリカでは激しい開発競争と激しいマーケティング戦略と社会(特に子供の食習慣)の変容により、加工食品による「糖・塩・脂肪」の消費量が増大し、その結果肥満が蔓延しました。(以前タバコの時に見られたような)消費者の反発や政府からの規制を恐れた業界の一部の人は、1999年に対策会議を開催します。しかし、「経済」を最重要視するほとんどの企業のトップは、問題を先送りするだけでした。
 対策を考えた企業もありました。ところが「三大兵器」を減らすとコストは上がり加工食品の魅力は消え失せて売り上げは減り、すると株主と株式市場はその企業に“罰”を与えました。消費者だけではなくて、企業も「加工食品の罠」に捕えられていたのです。
 「糖に対する受容体」は、舌だけではなくて、食道・胃・膵臓にまで分布し、どれも脳の快楽領域につながっています。糖を加えるとドーナッツは膨らみ、パンは日持ちが良くなります。「販売量の増大」だけではなくて「製造コストの削減」からも「糖の使用」は企業にとって望ましいことなのです。
 「砂糖たっぷりのシリアル」が現在問題になっていますが、実はこれは本来は「健康食」でした。19世紀のアメリカ人の朝食は脂肪たっぷりのものでした。そのためジョン・ケロッグが「砂糖・塩・脂肪を極限まで減らした食事療法のサナトリウム」を作り、そこで朝食にシリアル(砂糖抜き)を出しました。ところが弟のウィルが砂糖を入れてみたら大ヒット。それ以来加工食品メーカーは「砂糖・塩・脂肪のどれかが社会問題になったら、それは減らして他の問題になっていない成分を増やす」戦略を採用するようになりました。
 コカコーラは糖分が非常に多いことで有名ですが、その人気の秘密は実は「味の特徴が際立っていない(バランスが重視されている)」ことと「マーケティング戦略」によります。「特別に美味しいから」ではないんですね。タバコ会社と食品加工会社の意外な関係も本書に登場します。
 「脂肪」では「チーズ」と「肉の脂肪」が取り上げられますが、糖分と違って脂肪には「至福ポイント(これ以上含まれると消費者がかえって離れていく量)」が存在しません。脂肪が多ければ多いほど消費者の脳(の褒賞系)は喜ぶのです。「肥満」と「発癌性」の面から警報が鳴らされますが、業界は政府と結託して“頑張り”続けました。
 そして「塩分」。昔のアメリカ人の食卓には塩蔵品がよく使われましたが、現在は加工食品から大量の食塩をアメリカ人は体内に取り入れています。そしてそれは日本人も同じことです。
 私を含む消費者は「食」に関して、「安さ」「コンビニエンス」「子供時代からの食習慣」に縛られています。その「縛られている」に巧妙につけ込むのが「マーケティング戦略」です。となるとまずは「自分が縛られていること」に気づき、ついで知識を集め、自分で判断するようにしないと、私たちは「食」に関しては誰かの奴隷であり続けることになりそうです。ちなみに“それ”ができている(大手加工食品会社の製品に頼らない食習慣を持っている)人に、その大手加工食品会社の重役たちが多く含まれているのは、なかなか示唆的です。


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