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2016年11月17日06:51

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 東北大震災のあと「絆」を口ずさむのがずいぶん流行りましたが、今の日本でそのことを覚えている人はどのくらいいるのでしょう?

【ただいま読書中】『無縁社会 “無縁死”三万二千人の衝撃』NHK「無縁社会プロジェクト」取材班 編著、 文藝春秋、2010年、1333円(税別)
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 官報には身元不明の死体を「行旅死亡人」として掲載しています。ただ、地方自治体ごとの扱いで全国統計がないため、実際にどのくらいの人が身元不明扱いで亡くなっているのかはわかりません。NHKの取材班は全国に問い合わせをし、1年間で3万2000人、という推定値を得ます。ではその現場はどうなっているのでしょう?
 読んで見ると、官報の記載は実に素っ気ないものです。しかしそれには理由があります。官報の「1行(22文字)」あたり918円の料金がかかるので少しでも“節約”して情報を詰め込みたいのです。これ、ネット官報だったらもっと詳しく書き込めないでしょうか。
 取材班は「個人」を追います。故郷を離れ、繋がりが切れ、都会でも新しい繋がりは作れず、最後に無縁死をした人の生涯を追いながら、スタッフは「この人は“普通の人”だった」「これは一歩間違えたら自分の人生だったかもしれない」と思います。取材の旅は、いつしか弔いの旅になります。
 火葬をするだけで儀式を一切省いた「直葬」が増えているそうです。本書出版時に東京ではお葬式の3割が直葬でした。金銭的な理由もありますが、意外なのは「長寿化」が原因の一つとしてあげられていることです。長生きすればするほど、知人は減っていきます。つまり「緣」が薄くなっていく。そこで無理をして人を集めて葬儀をする必要はない、という考え方があるのです。
 さらに、身元がわかっている遺体を遺族が引き取り拒否をするケースが多いこともわかります。こちらの要因は「少子化」「単身化」「未婚化」です。
 疾走した人の部屋を「特殊清掃業者」が清掃しようとして発見したのは、その人の両親の遺骨でした。業者はそれを「陶器一個」と記載して宅配便で「寺」に届けます。取材班は遺骨を追い、富山県のお寺にたどり着きます。引き取らなければ遺骨は「廃棄物」扱いされてしまいます。それは忍びない、ということで、届けられた遺骨を1週間安置して毎朝お経を上げて供養をし、その後納骨堂へ納めています。「生き場所がなかった骨」を見ながら住職は「この人は、もしかしたら生きている間から社会の人間関係から切り離されていたんじゃないか」と語ります。
 順風満帆の企業戦士だった人が、退職した途端社会とのほぼすべての繋がりが切れてしまった例も紹介されます。ただその人の姿が放映されたあと、いろんな人から連絡があり、消えていた絆が少し復活していった、と聞くと、ちょっとほっとします。
 「疑似家族」のNPOもあります。何かあったときに、会員には家族の代わりに、入院の保証人・金銭管理・様々な届け・葬儀などの世話をしてくれるNPOです。今そこに多く参加しているのが「おひとりさま」の女性たち。ただ、取材は難航します。話はしても良いけれどテレビに出るのは嫌、という女性ばかりだったのです。
 お墓は「無縁墓」になるのだろう、と思っていたら、「共同墓」というものが登場しました。家族ではなくて他人同士が一緒にはいるお墓です。生きているときは孤独でも、死んだあとは誰かと一緒、というわけです。
 ビートルズの「エリナー・リグビー」のサビの歌詞は「孤独な人びとはどこから来るのだろう。孤独な人びとはどこに身を置くのだろう」だそうです。
 ……では、どうすれば?


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