mixiユーザー(id:235184)

2016年11月15日07:08

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HDTVの恐怖

 この前テレビにインタビューを受けている人の上半身が写っていたのですが、顎の脇のちょっと下がったところにひげが一本そり残されていてひょんと突っ立っているのがはっきり見えました。昔の走査線のテレビの時代にはきっと「毛が一本」くらいは写らなかったでしょうに、今はそういったものまで写ってしまうわけです。
 私は自分の顎をなで回しながら、自分がテレビに映されるような人間ではないこと、を感謝しました。

【ただいま読書中】『パーフェクト・ストーム』セバスチャン・ユンガー 著、 佐宗鈴夫 訳、 集英社、1999年、1900円(税別)
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 1991年マサチューセッツ州グロスター。漁民たちは「極端な生活」をしていました。1箇月の漁から無事帰港したら1週間飲んだくれ散財し続け、二日酔いの体でふらふらしながら次の漁に出かけるのです。「人生設計」を持っている者はほとんどいませんでした。メカジキ漁船アンドレア・ゲイル号(乗組員は総勢6人)もそういった乗組員を乗せて出港しました。船を見送る人たちは、自分たちが1箇月後に、帰港歓迎パーティーに出るのかあるいは追悼式に出るのかはわかりませんでした。
 漁場に着くと、乗組員には20日間ぶっ続けの20時間労働が待っていました。うまくいけば、1日に1トンの漁獲があります。うまくいかなかったら……操業日数が伸びます。アンドレア・ゲイル号も不漁に悩みます。しかし漁期は終盤、悪天候が待っていました。さらに、大型のハリケーンが近づいてきます。沖に出すぎていたら、港に逃げ込むことは困難です。さらに沿岸救助隊の手も届きません。北大西洋は、強風と史上まれに見る高波とに揉まれることになりました。
 暴風下の波のエネルギーは、風速の4乗に比例して上昇します。位置エネルギーと運動エネルギーはすべて水の動きに変換され、船をもみくちゃにするのです。その中には日本の永伸丸も含まれていました。あんなところまで日本船が魚を捕りに行っているんですね。
 本書では、基本的に「事実」「証言」をベースにしているため、“その時”アンドレア・ゲイル号に何が起きたのかを“再現”することはできません。ただ、改修で重心がやや高くなっていたため、復元力が悪くなっていただろうことは客観的に言えます。海軍が行った実験で、船体の長さより波高の方が大きければ、砕け波1回で船は転覆します(傾斜度45度の波を登ろうとして登り切れずにずるずると船が海面を滑り落ちて波窪に船尾が突っ込み船首には波頭がぶつかってひっくり返されます)。船幅より大きな波が連続的に襲ってきても船は転覆します。アンドレア・ゲイル号の船幅は20フィートですが、時化の状態は悪化していて波の大きさはそれより大きくなっていました。
 映画では、ハリケーンの中を発信する救難隊のヘリコプターとか、信じられないくらい高い波とかが描かれていましたが、本書によるとほとんど現実のものようです。気象的に信じられない(パーフェクトな)嵐の中に放り込まれた人びととそれを遠くから案じるしかなかった人びとの物語です。


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