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2016年11月02日20:06

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 もし地球が二つの月を持っていたら「一箇月」はどんな長さになっていたんでしょう?

【ただいま読書中】『もしも月がなかったら ──ありえたかもしれない地球への10の旅』ニール・F・カミンズ 著、 増田まもる 訳、 東京書籍、1999年、2200円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4487761131/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4487761131&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 「地球」について深く考察するために、「もしも○○たら」という10の仮定を置いてそれぞれのテーマを追究した本です。
 トップは本のタイトル通り「もしも月がなかったら」。今の太陽系とそっくりで、単に地球に月がないことが違うだけの“太陽系”のお話です。これは「地球」ではありませんから著者は「ソロン」という名前を与えています。微惑星の衝突によって月が形成されましたが、その衝突がない場合、ソロンは最初のコース通り冷え続け、雨によって海が形成されます。しかし潮汐力は太陽のものだけのため、満潮と干潮は地球より穏やかになります。若い地球は海底を擦る海水の摩擦力によって自転が遅くなり、「1日」が6時間から24時間になりました。ソロンも自転が遅くなりますが、「1日」は8時間にしかなりません。そのため風はひどく強くなります。ほとんどは赤道と平行に東から西に吹く暴風で、風速は時速300km以上。『狂風世界』(バラード)です。原始大気は、二酸化炭素と窒素が中心です(金星とほぼ同じはず)。ではそんな星で生命は発生するでしょうか。
 「発生する」と著者は言います。海水中の成分は原始地球と変わらず、強風による嵐で稲妻が大量に発生していてエネルギーを供給することで、原始地球と同じように生命は発生するだろう、と。ただしその後が違います。穏やかな潮汐では、陸の土砂は海には流れ込みにくくなりますし、海流も発生しにくいため、生命の拡散にずっと時間がかかるのです。それでも生命が海に満ち、ついに上陸しました。そこで植物が出くわすのが強風です。茎を伸ばすと吹き倒されるから、地に這う形になります。その結果葉の総面積は小さく、大気中の二酸化炭素を酸素に変えるのに地球より非常に多くの時間がかかります。ただ、進化によって、頑丈な根を得てすっくと立つ木が登場するかもしれません。するとそれを風除けにした別のタイプの植物が登場するでしょう。
 動物はどんなものが登場するでしょう。風に強い形態でないと生き残れないでしょう。「8時間の一日」に適応している必要もあります。強風が聴覚の発達に影響を与えます。人類(に相当するもの)が登場したとして、暦はどうなるでしょう。「一日」と「一年」の間にある非常に使いやすい「一月」がソロンにはありません。宇宙飛行でも「地球周回」の次は「火星」になってしまいます。これはちょっと厳しいミッションになってしまいそうです。
 ソロンはあまり魅力的な星ではなさそうです。月があって良かった。
 本書には「月がもっと地球に近かったら」「地球がもっと小さかったら」「地軸がもっと傾いていたら」などとっても魅力的な「もし」と、その結果起きる「地球の姿」が生き生きと描かれています。「もし」の仮定を置くことで「今の地球」を見直すことができて、ずいぶんお得な気分になる本でした。ただし最終章は「もしもオゾン層が破壊されたら?」。これは単なる「仮定」ではなくて「現実」と紙一重の話です。これは実際の観測と計算に基づいているので、背筋がひやりとする思いをさせられる章です。


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