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2016年11月01日19:10

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踊らない空白

 『踊る人形』でシャーロック・ホームズは「英語で一番使われる文字はE」と言いました。たぶんそれは正しいのだろうと思いますが、元になる文章がタイプライターで打たれていた場合には「E」ではなくて「スペースバー」が「一番使われるキー」になりません? 「E」が使われない単語はありますが、単語と単語の切れ目には必ずスペースが置かれますから。もしも「踊る人形生成タイプライター」で暗号文が打たれていた場合、ホームズはどんな推理を展開していたのでしょう?

【ただいま読書中】『アムトラック 米軍水陸両用強襲車輛』スティーヴン・ザロガ 著、 テリー・ハドラー/マイク・バドロック カラーイラスト、武田秀夫 訳、 大日本絵画、2002年、1300円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/449922781X/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=449922781X&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 軍事作戦でもっとも困難で危険なものの一つに「敵前上陸」があります。第一次世界大戦でのガリポリ上陸で連合軍はトルコ軍によって大損害を与えられました。1920年代からアメリカでは陸軍と海兵隊が上陸用装軌車輛(海上も陸上も活動できる装甲車)の採用を検討し始めます。やっと完成した「アリゲーター」は、使用時間が200時間まででしたが(それ以上使うと、エンジン、サスペンション、履帯が保たない)、ガダルカナル島では艦から砂浜までの物資補給には有用でした。(アメリカ軍の上陸用舟艇の基本アイデアが日本軍の「大発」からだった、というのは『アメリカ海兵隊の太平洋上陸作戦(上)』にありましたっけ)
 アフリカのトーチ作戦、アッツ島やソロモン諸島での上陸作戦でもアリゲーターは補給任務に活躍していました。そして、タラワ。珊瑚礁に囲まれた島ですが、珊瑚礁の水深が不明。海兵隊は「ここでこそ兵員輸送にアムトラック(部隊名がアムトラックだったため、アリゲーターやその後継のウォーター・バッファローは一般にはアムトラックと呼ばれるようになっていました)を使うべき」と判断します。その判断は正しく、上陸第1・2波のアムトラック隊は大損害は受けたものの多くの海兵隊員を浜辺まで送り届けましたが、3〜5波の普通の上陸用舟艇は珊瑚礁に引っかかり、そこで集中砲火を受け、そこから徒歩で浅い海を渡った海兵隊員は海を血で染める大損害を被ることになってしまいました。戦車用の上陸用舟艇でシャーマン戦車も送られましたが、これも珊瑚礁に引っかかってしまってほとんど活躍できませんでした。そのため、水陸両用戦車の構想が持ち上がります。
 タラワの大損害から、アムトラックの装甲の強化と重武装化が進められました。アムタンクの登場です。アメリカ軍は不思議な軍隊で、海兵隊・陸軍・海軍が意見がバラバラのまま戦争をやっていますが、同時に、太平洋戦域と大西洋戦域とでもバラバラなのです。上陸作戦でも、ノルマンディーではDDシャーマン戦車(履帯とスクリューの二駆動方式)が使われましたが太平洋では全然使われず、逆にアムタンクはノルマンディーではまったく使われませんでした。
 場所によって日本軍は迎え撃つ戦術を変え、アメリカ軍も装備と戦術を進化させ続けます。その細かい変更が本書で紹介されていますが、その発想の柔軟さには驚きます。ペリリュー島では、アムトラック部隊がアムタンク部隊を先導し、とりあえず浜辺まで到達したらすぐに戦車部隊を投入、海岸地区をさっさと確保、それから火炎放射器を装備したアムトラックが投入、という上陸作戦としてはほぼ完成形を示しています。
 フィリピンではそれまでで最大の数のアムトラックが投入されましたが、日本軍は水際作戦を放棄したため、アムトラックは「浜辺までの装備輸送と人員輸送」しかできませんでした。見せ場無し、です。硫黄島では上陸直後に日本軍の猛攻撃がありましたが、戦車が多数投入されたためアムトラックはやはり見せ場無し、の立場に置かれました。
 沖縄でも水際作戦は放棄されたためアムトラックは上陸後も兵員輸送の役目をしただけでしたが、沖縄周辺の小島の上陸作戦では重要な役目を果たしていました。
 戦後も各国で各種の「アムトラック」が開発/運用されていますがそれぞれの国で発想が違います。どのアムトラックも、遠目にはそっくりですが、詳細なイラストで比較すると、違いがよくわかります。
 ただ、これからの戦争で「敵前強襲上陸」が必要になる場面って、どのくらいあるのでしょう? わざわざ敵が守備を固めているところに正面切って上陸するのはあまりに損害が大きくなりそうです。兵員輸送だったらヘリコプターの方が楽に望むところに運べそうです。どうしても上陸したいのならホバークラフトの方が上陸後も速度が稼げそうです。となると、アムトラックはもう時代遅れなのでしょうか。生粋の海兵隊員は別の意見を持っていそうですが。


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