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2016年09月13日07:24

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無○

 他人に対して力を行使することに慣れた人間は、相手が無害であることと無力であることを同一視する傾向があるようです。だけど、無害であっても無力とは限らないし、無力であっても無害であるとは限らないのです。

【ただいま読書中】『地獄のハイウェイ』ロジャー・ゼラズニイ 著、 浅倉久志 訳、 早川書房(ハヤカワ文庫SF64)、1972年(77年3刷)、320円
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 核戦争後の地球は悲惨な状況になっていました。放射能のたまり場があちこちにあり、上空には強風が吹き荒れ、そのさらに上には極から極へのオーロラが耀き、岩石が降る嵐が定期的にやって来ます。人が住める場所の外側には,放射能で突然変異をした様々な化け物が待ちかまえています。そんな中、カリフォルニア国からボストンを目指して、三台の装甲車が出発します。ボストンから「ペストが流行して全滅の危機」という知らせを持ってメッセンジャーがやっとたどり着いたのです(ついてすぐに死んでしまいましたが)。
 装甲車のドライバーに選ばれたのは、ヘルス・エンジェルズの最後の生き残りで札付きの悪(だけど地獄の荒野の運転ではピカイチの腕を持つ)ヘル・タナー。これまでの犯罪の赦免状を餌にされ、タナーは地獄のハイウェイを進みます。ボストンが全滅したら人類の生き残りの半数が失われるからそれを防がねばならない、という“大義”にタナーは興味を示しません。しかし、地獄のような世界を進む内に彼の心境には変化が生じます。少なくとも冒険を楽しむようになります。これまで彼は「人類の決まり事」に逆らい続けていました。しかし、放射能で煮えくりかえったアメリカ大陸の「呪いの横丁」はタナーの挑戦心を見事に挑発してしまったようです。
 想像力の限界を酷使したような怪物が次々登場してはタナーを襲います。しかし、ボストンまであと少し、というところでタナーを襲ってきた“怪物”は、人間でした。
 著者が「神話とSFの融合」を得意にしていることは有名ですが、本書では「西部劇とSF」が融合しています。アメリカでは「スター・ウォーズ」が登場するまでは、西部劇がアメリカの神話だったからでしょう。また、筋金入りの悪党(アンチヒーロー)が強制されてしぶしぶ「ヒーロー」になってしまう、という皮肉な筋立ても魅力的です。これはたとえば映画「ニューヨーク1997」に引き継がれていますね。また「終末論の世界での暴走族」はやはり映画「マッド・マックス」にきっちり引き継がれています。目立たない形ですが、本書は“子孫”が多そうです。


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