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2016年07月28日06:46

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旨味を捨てたらもったいない

 災害時の非常食用に買っていた食糧を我が家では定期的に食べて入れ替えています。で、今回は鯖の缶詰(味噌煮)でした。子供の頃には好きだったなあ、なんて思いながら口に入れたら、あら、ずいぶん上品な味になっています。これだけでご馳走だわ。
 で、缶に残った汁を眺めて、このまま流しに捨てると下水処理場に負荷をかけるなあ、ということで、熱湯を注いで薄めてみました。飲んでみたら、鯖の旨味がたっぷり溶けこんだ“味噌汁(のようなもの)”になりました。一人分しか量が取れないのが難点ですが、美味しかったですよ。

【ただいま読書中】『恐竜はホタルを見たか ──発光生物が照らす進化の謎』大場裕一 著、 岩波書店、2016年、1300円(税別)
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 「発光生物」は「光っていることを人間が認識できる生物」と定義づけられています。単に「科学的に光っている」だけだと、すべての生物は「バイオフォトン」を発しているので「すべての生物は発光生物」ということになってしまいます。だから「発光生物」はきわめて“主観的”は定義なのです。
 著者が数えたところ、発光する「属(種の一つ上のカテゴリー)」は800くらいで、そのほとんどは海に生息しているそうです。さらに、発光する「属」ではそこに含まれる種はほとんどが発光するので、地球上では数万種の生物が光っています。
 海中で光るのは、生き延びるためです。中深層では届く太陽光線は弱くなりますが、捕食動物が下から上を見たらその光をバックにした魚影は目立ちます。そこで腹を弱く光らせると背景の太陽光線と紛れて下からは認識しづらくなるのです。
 チョウチンアンコウの発光器は「疑似餌」として機能している、が定説ですが、実はそれをきちんと確認した人はいません。太陽光が届かない海の深層には巨大な目玉を持った魚が多く生息していますが、彼らは何を見ているかといえば、おそらく発光生物です。では発光生物の方は発光することでどんな利益を得ているのでしょう? 謎です。ところがこの謎を科学的に解明しようとする人がとても少ない。発光クラゲから緑色蛍光タンパクを発見してノーベル化学賞を受賞した下村博士は、生物発光の生物学的な研究をしている人は世界で30〜50人くらい、化学的な研究者は10人以下だ、と言っているそうです。基礎研究で人気が無い、ということなのでしょうが、もったいない話に思えます。
 高校の生物の授業で「ホタルの発光は、ルシフェリンがルシフェラーゼという酵素で酸化されて起きる」と習いました。ところがこれだけが「発光のメカニズム」ではありません。発光生物ごとに異なったやり方で発光をしているのです。たとえばウミホタルの「ルシフェリン・ルシフェラーゼ」はホタルのものとは物質的に全く違っています。オワンクラゲは「イクオリン」というタンパク質にカルシウムイオンが結びついてイクオリンが消費されていくことで青色光を発します(つまり酵素を使いません)。
 発光様式は二種類。自力発光(自身が発光)と共生発光(発光バクテリアを体内に共生させる)です。共生発光は、魚類やイカで多く知られていますが、その他の種ではなぜか見つかっていません。なお、この二種類は、「一箇所に大きな発光器」は共生発光、「小さな発光器が体中に分布」は自力発光、と一瞥で区別できるそうです。
 さて、著者の研究テーマ「発光の進化」。様々な種で別々のやり方で発光をするのは、進化論的にはどのような意味があるのでしょう?
 ホタルのルシフェラーゼは、もともとは脂肪分解をする酵素(もちろん光りません)のほんの一部のアミノ酸が別のものに置き換わって出来上がった、と著者は考え、実際にショウジョウバエの酵素のアミノ酸を一つだけ置き換えると、かすかに光ることを発見しました。わずか一つのアミノ酸ですから、進化はそれほど難しくないはずです。ちょっとしたDNA転写エラーで起きてしまいます。ではもう一つのルシフェリンはどうでしょう。ホタルは“それ”をいつ手に入れたのでしょうか(これが本書のタイトルの意味です)。ホタル科の起源は、白亜紀だそうです。ではなぜホタルは光ったのでしょう? 著者は「自分が食べても不味いことをアピールするため」と考えています。当時の原始哺乳類は、虫を“主食”にしていたはず。だからホタルは食べ尽くされないために光っていた、のだそうです(なお、実際に食べた人の話では、ホタルは本当に不味いそうです)。
 著者はスティーブン・ジェイ・グールドが大好きらしく、本書にもあちこちに彼が顔を出します。彼のエッセー群を読み直したくなってしまいました。


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