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2016年06月01日06:48

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読んで字の如し〈草冠ー26〉「苔」

「苔径」……忍者専用道路
「苔髪」……苔が生えたウィッグ
「白髪苔」……白髪のウィッグに生えた苔
「舌苔」……好んで舌を繁殖地にする苔
「銭苔」……好んで銭を繁殖地にする苔
「苔色」……苔の色
「青苔」……苔の色はブルー
「苔寺」……苔で建築されたお寺
「扁平苔癬」……平たくて苔のようなたむし
「海苔」……海から採れる苔
「苔生した墓石」……墓石からは苔が自然発生するらしい

【ただいま読書中】『「失われた名画」の展覧会』池上英洋 著、 大和書房、2016年、2000円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4479392866/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4479392866&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 人類の歴史で生み出された優れた美術品は、天災・火災・戦争・盗難などで多数失われてきました。本書は、そうした「失われた名画」を失われた原因ごとに集めてバーチャルな展覧会を開こう、という試みです。
 もっとも、単純な分類が難しい作品もあります。たとえばポール・ゴーガンの「開かれた窓の前の女性」(別名:婚約者)はロッテルダムのクンストハル美術館から盗まれ、主犯が逮捕されたときその母親が証拠隠滅で焼き捨ててしまいました。これは「焼失」でもあり「盗難」でもあります。「後世に名を残したい」という欲望からアルテミス神殿に放火したばかたれのおかげで失われた貴重な美術品もあります。放火とそれを上回る過失からの火事によって、歴史上もっとも多くの美術品が失われたはず、と著者は推定しています。
 戦火による破壊も数多くあります。ここに並べられたカラー写真を見ると、その“損害”の大きさにため息が出ます。その“主犯”のひとりにアドルフ・ヒトラーがいますが、著者は彼に対する反感を持っているらしく、「ヒトラーが、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョとミケランジェロ・ブオナローティの作品の区別がつかなかった」エピソードを紹介してくれています。私のように無知な素人ならともかく、自分の審美眼を他人に押しつける人が「ミケランジェロ」と「カラヴァッジョ」の区別がつかないのは、たしかに恥ずかしいことでしょうね。
 モネの「草上の昼食」のように、切断されてしまう絵画も数多くあります。ダ・ヴィンチの「聖ヒエロニムス」など頭の部分だけがくりぬかれてしまいました。ドガの「マネとマネ夫人」は、マネが気に入らない部分を切り捨ててしまっています。壁画では、絵の部分にあとから開口部が作られる場合があります(ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」でも、キリストの足許がくりぬかれてしまいました)。元はどうだったかは、16世紀の模写でわかります。
 意図した破壊ではなくて、「修復」という名前の「破壊」もあります。厳選されたひどい例が本書には登場します。
 本書は西洋美術にフィールドを限定していますが、それでもため息が止まらなくなるくらいの“豊かなラインナップ”です。これがアジアや中東やアフリカや“新大陸”も含めたら、一体どれくらいの財産を人類は失ったのだろうか、と私は一瞬ゆううつになります。ただ、嘆いても役には立ちませんから、せめて残されたものを愛おしむことにいたしましょうか。


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