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2016年05月02日07:23

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尊敬

 本当にすごい人とは、自分の味方だけではなくて、敵からも尊敬される人のことかもしれません。

【ただいま読書中】『薬で読み解く江戸の事件史』山崎光夫 著、 東洋経済新報社、2015年、1500円(税別)
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 家康が薬好きで自分で調剤もしていたことはよく知られていますが、これは毒殺予防、という意味もあったのかもしれません。当時としては長命と言える75歳まで生きていましたが、徳川将軍で70歳以上まで生きたのは、家康と15代慶喜だけだそうです(慶喜は77歳で死去しました)。将軍って、長生きできない商売なんでしょうか。
 新撰組の土方歳三は、若いときには「石田散薬」を行商で売り歩いていたそうです。これは家伝の薬で、打ち身や捻挫によく効いたそうです。土方のおかげで新撰組にも採用されていましたが、実際に効き目があったようで、明治時代には軍医総監松本順のお墨付きを得て日本陸軍は日清日露戦争でもこの薬を携帯していたそうです。製法は、刈り取って乾燥させた牛額草を黒焼きにして鉄鍋に入れて日本酒を簓(ささら)で散布して乾かし、それを粉末にする、という簡単なような複雑なような手順です。で、それを再現した人がいます。日本酒もわざわざ江戸時代の古酒を当時と同じ製法で製造しているメーカーから入手しています。で、著者はそれを服用、というか、酒と一緒に飲用していますが、実に美味かったそうです。実は酒が美味かったのかな?
 幕末、孝明天皇は急に天然痘を発症、一時小康状態となりますが急変、崩御となります。ところが、天皇周辺では誰も天然痘を発症していませんでした。どこからウイルスがやって来たのか、ということで著者は「暗殺」を考えています。ところで、天皇が一時小康状態となったときに投与されていたのは「紫雪」という徳川家の秘薬でした(他に同名で、加賀藩の秘薬や一般向けの「紫雪」も存在しているそうです)。
 面白いのは著者の態度です。孝明天皇の時には漢方薬が一時効果を示しました。だから結果は死亡でも漢方薬すごい、となります。ところが同じ幕末で、薩摩藩主島津斉彬の病気(コレラ?)の場合には、西洋薬が効果を示さず結局亡くなったので、西洋薬はつまらない、となっています。……ちょっと漢方薬に肩入れをしすぎでは?と私は感じます。もちろん江戸時代には、外科系は蘭方、内科系は漢方の方が優位にあったことは確かですが、何かを評価する場合には公正な態度を保った方がその主張の説得力は増す、と私は思っているのです。
 杉田玄白、小林一茶、貝原益軒などの(事件ではなくて)人生も取り上げられていますが、そこでは食事とか常用の薬だけではなくて、ストレスへの対処も大切であることが説かれています。これは現代社会でも、というか、江戸時代よりも現代の方がストレスは強くなっているはずなので、「心の養生」が重要そうです。私の場合、とりあえず楽しい本を読んでいれば幸せかな。


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