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2016年04月28日06:35

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WWFへの疑問

 私が「WWF」の活動に疑問を初めて感じたのは、アメリカのプロレス団体「WWF」に対する名称使用停止を求める訴訟でのことでした。もちろんまったく異なる団体が「同じ名前」で活動していたら社会的に混乱が生じるかもしれませんが、プロレスラーとパンダを混同する人がそこまで多いでしょうか? さらに実際に「WWF」という名称が登録されたのはプロレスの方が早かったはず。自分があとから「その名前」を名乗っておいて、「お前の方が変えろ」と要求するというのは、傲慢な態度では?と私は感じました。さらに「プロレスなんて低級な団体が、自分たちのような高尚な活動をする人たちと同じ名前を使うなんて許さない」というのも、傲慢さというか差別感というか、あまり立派ではない感覚を私は感じています。「プロレスなんて」と“上から目線”の人にはこの感覚はわかってもらえないかもしれませんが。

【ただいま読書中】『WWF黒書 ──世界自然保護基金の知られざる闇』ヴィルフリート・ヒュースマン 著、 鶴田由紀 訳、 緑風出版、2015年、2600円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/484611516X/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=484611516X&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 インドが白人の植民地になる前、森林(と底に住む動物)は人間と“共存”していました。白人(特にハンター)は魅力的な獲物である虎が絶滅の危機にあることに気づき、その保護のために保護区を設定し、“先住民”を強制移住させました。その結果100万人近くの人が住む場所を失いました。そして、虎は数を減らし続けました。先住民が強制移住させられたあとに入ってきたのは、密猟者や森林伐採業者だったのです。するとWWFは、さらなる強制移住が必要だ、と言い出しました。虎を絶滅させないために。
 こういった「先住民を徹底的に軽く見る態度」を著者は「植民地主義的態度」と表現しています。
 WWFは「世界を変える」ために、様々なグローバル企業と協力しています。そこで著者は、「パンダマーク」と何が組み合わされているか、そしてその結果何が起きているか、を追跡し始めます。
 たとえば、ノルウェーWWFとパートナーシップ契約を結んだマリンハーベストは、チリでのサケ養殖で重大な環境汚染を引き起こしていました。しかし著者の指摘に対してノルウェーWWFは「ノルウェー以外のことには関与しない」「ノルウェーでマリンハーベストは衛生的で模範的な活動をしている」と木で鼻をくくったような返事をします。さらに「持続可能な集約的漁業」を目指す、とも。この「持続可能な集約的漁業」の危うさは、たとえば日本の魚の養殖を見てもある程度見当はつきます。魚は養殖されているから海から収奪されていませんが、そのエサには野生の魚が大量に使われているのです。著者はこう述べます。
》集約的養殖業は天然資源を枯渇させ、伝統的な漁業を破壊しつつある。つまり「持続可能なサケの養殖」とは、私たちの批判的思考能力を麻痺させるために養殖業界とWWFが共同ででっち上げたおとぎ話なのだ。
 WWFのルーツはアフリカにありました。1950年代の、セレンゲティ国立公園からマサイ族を追い出せば自然は保護される、という運動です。かくして10万人のマサイ族は、「表:自然保護、裏:人種差別」によって故郷を失いました。この運動から学んだ人々が、それをもっとグローバルにおこなおうと集まったのが、WWFです。著者に言わせれば「表:地球環境保護、裏:人種差別・汚い金でも金は金」。ちなみにWWFが設立されてから実行された「再定住計画」で強制移住させられた人々は「イヌイット」「黒人先住民族」「アディヴァシ」「ピグミー」「ダヤク族」「パプア先住民族」……白人はいませんね。ちなみに、追い出されたマサイ族は、タンザニアに移住しましたが、その後またWWFによって追い出されます。ンゴロンゴロ自然保護区を「保護」するために。マサイ族が追い出された後は、白人のためのキャンプ地になりました。現在そこには豪華ホテルが建てられています(建てたのはWWF副総裁の甥)。そして、自然破壊が進んでいますが、それはマサイ族のせいだそうです。「原住民の狩猟は自然破壊。白人のハンターの行為は立派なスポーツで観光客も集まるから現地にとっては大きな利益」というのがWWFの主張の根幹にあるようです。WWFは「ゾウが絶滅の危機にある」とキャンペーンを張って募金を集めます。WWFのパートナーたちは「ゾウ狩りツアー」で大儲けをしています。そしてこの動きは「ゾウ」に限定されません。
 総裁となったベルンハルト王配(女王の配偶者)は、1962年に友人のジョン・H・ラウドン(ロイヤル・ダッチ・シェルの会長)を大口スポンサーとしてWWFに招き入れました。シェルは有機塩素系農薬で環境汚染スキャンダルを起こしていましたが、WWFはそれを批判しませんでした。67年BPのタンカーがイギリス海峡で座礁、原油での海洋汚染を引き起こしましたが、ラウドンが執行委員となっていたWWFインターナショナル執行委員会はこの汚染を黙殺しました。南アフリカでの「オペレーション・ロック」にも腐敗臭が漂います(なにより、そのことを扱ったテレビ番組をWWFが封殺した、という行為に私は問題を感じます)。
 インドネシアで熱帯雨林を破壊している企業は、WWFのバックアップを受けています。「クリーンなバイオマス燃料」生産をしている、と。しかし、熱帯雨林を破壊した後の大規模単一栽培が本当に「持続可能」なのでしょうか?(著者は実際に現場を見てきています) WWFはもちろん、破壊された熱帯雨林の再生にも努力しています。問題は、再生しようとしているよりももっと広大な面積の破壊に手を貸していることです。
 なお、WWFが秘密にしている「1001クラブ」(WWFの“パートナー”である世界中の大立て者たち)には、石油・鉱業・金融・船舶業界などの最高実力者がずらりと並んでいます。彼らの活動によってどのくらい大量のCO2が排出されたことか、と思いますが、「パンダマーク」がその免罪符になるようです。なお、このWWF貴族になるためには、特別なコネとクラブの空席と入会金だけで2万5000ドルが必要です。
 WWFは良いこともやっているはずです。しかし100%正しいこともないはず。しかし、正しくない部分を批判するものを全否定する(たとえば本書の原著も出版妨害をされています)という態度には、きな臭いものを私は感じます。何か後ろ暗いところがあるから、ほんのちょっとの批判も許せないのかな、と。間違っているのなら、間違っているところを批判し返せば良いことでは?


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