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2016年04月22日07:28

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レジスタンス

 日本が連合国軍に占領されたとき、占領軍に対するレジスタンス運動は活発におこなわれましたっけ?

【ただいま読書中】『日本占領下の英領マラヤ・シンガポール』明石陽至 編、岩波書店、2001年、6800円(税別)
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 真珠湾攻撃の1時間半前に、マレー半島に日本陸軍は上陸作戦を開始しました。42年2月15日英軍は降伏。マレー半島とシンガポールは以後日本軍政下に置かれます。このとき現地で何があったのかは、なぜか1960年代後半まで日本では研究が“封印”されていたそうです。そのためか、シンガポール陥落時の虐殺の被害者数は、日本側は6000人、中国は5万人と推定する、という大きなギャップがあります。もっと早く調査をしていたら良かったのでは、と私は後知恵で思います。
 イギリスの植民地政策は、ゴムと錫を輸出・食料と日常必需品は輸入となっていました。しかし日本の占領でゴムと錫の海外市場は失われ、食糧と日常必需品の輸入はできなくなり、マラヤ経済は悪化します。華僑団体は「抗日」活動を激化させます。第二代軍政部長渡邊大佐は「武断軍政」を敷きました。献金強要・華僑学校閉鎖と再開遅延・学校での華語使用禁止・差別政策などです。しかし華僑の協力無しでは経済が動かず、43年から華僑弾圧は緩和されます。マレー人に対しては「怠惰・無気力な民族」ということで特段の政策は採られませんでした。ただ、スルタンには特権を認め年金を支給するなど懐柔政策が採られています。インド人はほとんど無視されていました。
 抗日の最大勢力はマラヤ人民抗日軍(マラヤ共産党主体)でした。そして華僑が組織したマラヤ人民抗日同盟が抗日軍を支援します。ただし、積極的あるいは消極的な対日協力者も多数いました。
 渡邉大佐の“理念”の一つは「禊」でした。英国に植民地支配をされた原住民は、その「罪」に対して命を賭けて「禊」をするべきだ、というのです。だから日本軍に抵抗する者は徹底的に膺懲するべき、と渡邊は考えていました。参謀部は渡邊に異論を唱えますが、山下軍司令官の支持を得て渡邊は我が道を行きます。
 鉄道は重視されていました。マラヤ鉄道は、タイ国の鉄道さらに泰緬鉄道を通じてビルマの鉄道とも結んでいて、戦略上非常に重要だったのです。マラヤにタイ米を輸入するルートとしても重要だったことでしょう(この輸送が連合軍の空襲で滞ることで、シンガポールでの食糧配給は減らされていくことになります)。泰緬鉄道(正式には泰緬連接鉄道)と言えば「戦場にかける橋」ですね。クワイ川マーチが脳内に鳴り響きます。なお、空襲の統計がありますが、昭和19年8月から敵機来襲が激増し、それに反比例して輸送量は激減しています。これを見ただけでも戦況の判断はできそうです。
 シンガポール陥落で、兵士は捕虜として泰緬鉄道建設や台湾の鉱山などでの強制労働、一部は朝鮮や日本にまで送られました。民間人は強制収容所です。そこには多数の女性も含まれていました。チャンギ刑務所はその内の一つの施設ですが、生きてそこに入れたのは“幸運”だったのかもしれません。避難の途中で日本軍に追いつかれて虐殺された人もいますし、慰安婦とされた人もいますから。チャンギ刑務所は600人を収容するよう設計されていましたが、最初は2600人、5箇月後には3800人が詰め込まれ、1945年には4511人となっていました。この生活に現代の日本で一番近いのは、地震直後の避難所でしょうか。あれにもっと人を詰め込んで、私物を取り上げ、情報を遮断して、周りを鉄条網で囲んで実弾を詰めたライフルを持った兵士にパトロールをさせたら、だいぶ近いものになるのではないか、と思えます。おっと、拷問もプラスしなくちゃいけませんし、女性であっても例外とはされませんでした。ひどい実例が(というか、拷問は常にひどいものですが)本書にも登場します。
 そして8月のある日、「昭南」はふたたび「シンガポール」になります。窃盗や略奪や血の粛清がおこなわれ、戦争が終わります。復讐のためでしょうか、こんどは捕虜となった日本軍兵士に対する虐待がおこなわれました。しかし“勝利者”として“戻って”きた英軍を、人々のすべてが歓迎していたわけではありませんでした。独立への動きが始まったのです。


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